2023年9月17日日曜日

標茶 谷川旅館

JR北海道、釧網本線の標茶駅から歩いて5分ほどのところにある谷川旅館は、親切で気さくな御主人、女将さんが切り盛りしている風情ある旅館である。特筆すべきは食事で、素晴らしく美味しいうえにボリューム満点。宿泊する際は是非とも食事付で利用することを勧めたい。2023年3月時点で一泊夕食付きで一人あたり5,900円(1部屋2名利用)と破格の値段であった

こちらが谷川旅館の外観。宿泊したのは2023年3月であった。

谷川旅館は標茶駅から非常に近い、好立地。駅前にはセブンイレブンがあるので、早朝出発の鉄旅にも使いやすい。

止別駅から釧路行き普通列車に乗車して約2時間、18:56に標茶駅へ到着。本日は標茶で宿泊し、明日一番列車で細岡駅へ向かう予定である。

鉄旅の先輩J氏と2名で宿泊した。部屋は畳敷きで布団が敷いてあった。暖房がしっかりと焚かれていて、3月のしばれた標茶の夜も快適に過ごすことができた。

部屋は清潔で大変心地よいためか、とても落ち着ける。寒い屋外を一日過ごしてきた旅行者にとって畳敷きで寛げるのは幸せなことこの上ない。

この夕食をご覧あれ。お盆に所狭しと並んだ小鉢には刺身、エビ、もずく、漬物、つみれの汁物が並び、おひつから御飯をよそる。さらにはメインのチキンステーキとジャガイモの甘煮、サラダと、どこから箸を付けて良いのか分からないくらいおかずが多い。しかも全てとんでもなく美味しい。超絶満腹になった夕食でった。これで一泊夕食付き5,900円(2023年3月時点)とは余りにも驚きである。

翌朝、御世話になった谷川旅館を出て標茶駅へ行く。3月といえで標茶の朝は寒い。

標茶駅は有人駅で、待合室が広い。SL湿原号の始発・終着駅だけあって、丹頂鶴のオブジェが飾られている。

釧路への通勤、通学、また標茶への通学に適したダイヤとなっている。標茶高校は255haの日本一の敷地広さを誇る高校である。

標茶駅の跨線橋は古めかしく趣がある。窓枠は木製。

5:45発釧路行き一番列車はキハ54 517の単行。動画に入らないようにしていたが、一名下車していった。この列車で次なる目的地、細岡駅へ向かった。


2023年7月8日土曜日

止別駅

[読み] やむべつ
[路線] JR北海道 釧網本線
[隣駅]   浜小清水(5.7km)←止別→(11.5km)知床斜里
kmは営業キロ
[位置] 北海道斜里郡小清水町字止別

釧網本線「止別駅」は風情のある木造駅舎に、ラーメン喫茶"えきばしゃ"、さらに流氷の時期に駅裏手の林を抜けて海岸へ出れば、感動的な流氷の風景に圧倒されるなど、魅力溢れる駅である。網走~知床斜里で下車するなら止別駅が間違いなく一番のオススメ。静けさ、美味しい食事、海岸の景色と3拍子揃った駅である。

止別駅は国道から離れており、大変閑静な場所にある。駅の裏手にはオホーツク海が広がっている。止別から知床斜里は線路と海の間には人工物が少ないので、釧網本線随一の車窓区間である。

藻琴駅から乗車したキハ54釧路行きは、途中の北浜駅で多くの観光客を降ろし、斜里へと向かって走って行く。写真は夏季営業駅の原生花園駅を通過するところ。

そして目的地である止別駅へと到着する。線路は構内前後で湾曲しており、過去に交換設備があったことを窺わせてくれる。

15:42定刻通りに止別駅へ到着。下車したのは私とJ氏のみで、乗車客はなかった。

駅員が配置されていた時代からの趣のある駅舎が現役。運転取扱のスペースはラーメン喫茶えきばしゃが入っており、この駅には常時人が居る。ここのラーメンも訪問の楽しみの一つである。

駅の出入り口には立派な駅名標が掲げられており、利用者を出迎えてくれている。主要道路から離れているので、駅前は極めて静粛だ。

駅舎内は多様なものが並んでいて中々賑やか。えきばしゃでは美味しい牛乳を飲むことが出来るためか、お店の入り口にはミルク缶のオブジェが置いてあった。

一際目を引いたのがこの座席。簡易リクライニングシートだろうか?今や簡易リクライニングシートのある車両は絶滅してしまったかと思いきや、何と東武鉄道のSL列車大樹で使われる14系客車が現役で簡リクを備えているらしい。初めてこのシートに座ったとき、背もたれが戻ってしまうぞ?と不思議に思ったものだ。183系基本番台のさざなみが最初の簡リク経験だった。

止別駅の発車時刻表。今回は15:43の列車で到着し、16:56の列車で出発する予定で、1時間13分の滞在時間がある。えきばしゃでの休憩と駅周辺の散策にはこのくらいの時間は欲しいところで、止別駅への滞在時間がこの日の予定のキーとなった。

らーめん喫茶だけにラーメンがメイン。有名なのはツーらーめん。チューシューとねぎ、2種類の具があるのと、通をかけてツーらーめんと名付けられている。

やってきましたツーらーめん。ううう、これは美味しい!塩ベースのスープが癖になる味わいである。ネギとチャーシューとの相性もバッチリで、これを書いているだけでまた食べたくなってしまう。つい先ほど藻琴駅でカツカレーを食べて2時間しか経っていないというのに美味しく感じるとは本当に美味しいのだ。

J氏がオーダーしたのはジャガイモ街道(牛乳・バター付)。少し分けてもらったが、このジャガイモには良い風味があって、バターとの相性が最高であった。またこの牛乳がクセが無く非常に美味しかった。ツーらーめんとジャガイモ街道で満腹of満腹になってしまったが、大満足の食事となった。

店内は、カウンター席とテーブル席があり、木材の内装で落ち着ける雰囲気となっている。食事のクオリティーが高いため、自分の中では喫茶というよりレストランである。

店内には列車の着発時刻が示されていて、列車の時間を確認しつつ、滞在することができる。食事をとるならば15:42着の列車で来るのが良いと思う。

食事を終えて、流氷を眺めるべく海へと向かってみる。止別海岸治山の森の中に残るトレースを辿り進む。列車の時間まで限られていたので、ここでは急ぎ目のペースで小走りと歩きを繰り返し時間を稼ぐ。

林を抜けると、その先には荘厳なる流氷の景色が待っていた。

人工物といえば、この風景に溶け込んだ納屋くらいで、あとは一切自然の造形のみであった。あまりに最高すぎる景色で今回の北海道旅行で最も印象に残ったのが止別駅裏手の流氷の景色であった。

傾き始めた太陽のオレンジ色の光を受けた流氷が静かに広がっていた。流氷と海が良い具合の割合で、これぞ求めていた流氷であった。静的な画であったのだが全く飽きない、いつまでも眺めていたい、そんな景色であった。

一匹のキタキツネが駆け抜けていく。冬らしくモコモコの姿は如何にもキタキツネらしい。

列車の時間に間に合うように急ぎ足で止別駅へと向かう。駅から知床斜里側にある第4種踏切。この踏切が海岸への入り口となる。私とJ氏は最初に駅を挟んで逆側の浜小清水側の踏切から海岸を目指したため、少々遠回りとなってしまった。

踏切から止別駅を遠望する。鄙びた駅構内が夕暮れと相まってとても良い雰囲気で佇んでいた。

止別駅16:44発の網走行きがやってきた。この列車を見送って、16:56発釧路行きに乗車する予定である。この両列車はお隣の浜小清水にて行き違いをする。

駅へ戻ると17時へなろうという時間。出入り口のランプが点灯していた。木造駅舎と上品な青背景に白抜文字の駅名板、そして一灯ランプと、ここにはノスタルジーが詰まっていた。

ホームと駅舎の出入り口を除いてほぼ昔のままの姿を留めている。しかもえきばしゃが入っているお陰で人の温もりがある。釧網本線には、藻琴、北浜、止別、川湯温泉と4駅も駅舎内に喫食のテナントが入っていて、そのお陰で無人駅に活気が保たれ、旅行者の滞在を楽しませてくれる。コロナ禍を乗り越えた4駅のテナントが今後も末永く続いてくれることを期待します。

夕暮れの止別駅舎内にはえきばしゃの灯が点っている。単なる無人駅とは違う駅の明るさである。間もなく16:56発の釧路行きがやってくる。

定刻通り、釧路行き普通列車がやってきた。

夕暮れの止別駅へキハ54の釧路行きが到着。

止別駅から乗車したのは、私とJ氏のみで下車客はいなかった。多くの旅行客にこの駅の魅力が伝わり、利用客が増えて欲しいと思う。

止別から知床斜里の車窓の秀逸さは釧網本線随一である。今までこの区間を何回か通ってもあまり記憶に残っていなかったのだが、流氷のお陰でここまで印象が変わるのかという位に今回はあまりにも強い印象を受けた。


知床斜里へ向けて疾走するキハ54の後方展望。この動画を見る度に再び流氷の季節に釧網本線の旅へ出たくなってしまう。


2023年6月10日土曜日

藻琴駅

[読み] もこと
[路線] JR北海道 釧網本線
[隣駅]   鱒浦(2.5km)←藻琴→(2.8km)北浜
kmは営業キロ
[位置] 北海道網走市字藻琴

釧網本線の駅めぐりは、これまで何度計画したことだろう?それほど釧網本線には駅舎や食についての魅力的な駅が多い。しかし仕事を言い訳にしている内に旅行が先延ばしになり、そうこうしている間に南斜里駅、南弟子屈駅が未訪問のまま廃止となってしまった。2023年3月のダイヤ改正で細岡駅の冬季営業が休止となるニュースを聞き、特急オホーツクのN183系乗車目的も兼ねて、北海道へと向かった。最初の訪問駅は藻琴駅である。

藻琴駅は網走駅からおよそ10km。平行して路線バスも走っているので、路線バスを組み合わせた訪問もできる。

特急オホーツク1号で網走駅へ到着したのは12:17。ちょうど昼時であり、網走からさほど離れていないの藻琴駅で昼食をとりたいと思いつつも、この時間帯に釧網本線の列車は無い。路線バスも藻琴駅へ向かう便がないので、タクシーで向かうことにした。網走駅で女満別空港入りしたJ氏と合流し、2人でタクシーを利用して藻琴駅へ到着。

板張りの外壁にホーローの駅名標。堂々たる偉容は期待に違わぬ駅であった。KEY COFFEEの立標があるのは食事・喫茶「トロッコ」が入っているためで、ここで食事をする事も楽しみにしていた。

トロッコの店内に入ると鉄人垂涎の品々があちらこちらに配されていた。ドーンと置かれているのは転轍機標識とそこに掛けられたタブレットホルダー、そして網走行きのサボ。

13時半頃ということもあり店内は空いていて、運良く一番奥のボックスシート部分の席を利用できた。旧型客車で使用されていたシートと思われ、ここでホームを眺めながら食事が出来るとは何ともラッキーだ。

私は空腹だったので、ここはガツンと食べようとカツカレーを注文。美味しかった。

J氏が注文したのは名物の「酪農ラーメン」。牛乳入っていて白いスープが特徴である。スープを少し分けてもらう。ミルクの効果なのか、塩ラーメンがマイルドになったような印象であった。

食べ終わってから列車までの時間が合ったので、網走市立第四中学校の前を通って海岸へ向かう。流氷が着岸していることはネットで確認していたが、場所によって疎密が違って、それも時々刻々変わっていくので、どのような流氷状態なのかは実際に行くまで分からない。

雪で足をとられながら小さな坂を登ると、そこには海の青さと流氷の白さが丁度良いバランスで調和した景色が待っていた。手前に小さな坂があったこともあって、登り切った瞬間に流氷の景色が現れるというドラマチックな展開であった。

これまで釧網本線沿いで流氷を見たことは無く、知床半島のウトロで見たことが唯一である。そのときは流氷がビッチリと密になっていて雪原のような景色であったり、所々に海が見えていても曇天で青白のコントラストが弱い景色であった。藻琴駅近くの海岸で見た流氷の景色は正に私が期待していたものであった。Breathtaking viewsとは正にこのことを言うのだろう。

打ち上げられた流氷の大きさに驚く。海に浮かんでいると9割以上が水面下にあるので、その立体的大きさは浜辺で見ると実感できる。

流氷の景色を堪能した後、15:23の列車に乗るべく駅へ戻る。夕刻に近づいたせいか、駅舎のヘッドランプが点っていた。

藻琴駅の時刻表。昼時は11:41の網走行きしかなく、15:23の列車まで暫く時間が空く。年間を通じると日中の乗車が少ないのだろうが、トロッコで昼食をとるのには不便だ。

縦書きのホーロー駅名標は木造駅舎と良く似合っている。いつの間にか、サッポロビールの文字が無くなっている。北海道らしくて良かったのだが、札幌圏以外は無くなってしまったようだ。

15:23発釧路行きの普通列車が時間通りにやってきた。

到着時、列車を出迎えてくれるかのように駅のランプが灯ってくれた。

やってきたキハ54単行列車は超満員であった。流氷時期の釧網本線は例外なく混雑しているのである程度の覚悟はしていたのだが、予想以上であった。この列車で次の目的地「止別(やむべつ)」へと向かった。


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