2022年4月2日土曜日

仁山駅

[読み] にやま
[路線] JR北海道 函館本線
[隣駅]   新函館北斗(3.3km)←仁山→(3.7km)大沼
kmは営業キロ
[位置] 北海道亀田郡七飯町仁山

J氏からお勧めの駅として教えてもらった仁山駅。仁山駅が魅力溢れる駅でありながら降りていなかったのは、日没後に通過していて、その魅力を見逃していたためである。実際に訪問してみると木造駅舎のほか、板張りホーム、加速線など、予想以上に面白みのある素晴らしい駅で、滞在の1時間26分は大満足な時間となった。

函館本線は七飯から大沼方面へ向かい、高度を上げていく。七飯駅の標高が34mに対し、大沼駅の標高は130mと、この区間で一気におよそ100mの高度差を駆け上がる。然るに線路も上り勾配が続くわけで、線路は七飯と大沼の間で緩勾配の藤城支線と急勾配の本線に分かれる。仁山駅は勾配の厳しい本線上にあり、それゆえの独特の設備も残っており、そこがまた魅力となっている。

赤井川駅訪問後は函館で一泊し、翌朝7:19発の大沼公園行きで仁山駅を目指す。3番線に停まっている2両の内、前方の1両が大沼公園行きとして発車する。

車両は「道南 海の恵み」としてマイナーチェンジされたキハ40 1809であった。沿線活性化を目的として導入された。大沼観光への利用にこの車両が当たったら旅行にひと花添えてくれることだろう。

床は光沢のあるニス塗り調となり、座席には木材を配して車内をグレードアップしている。ボックスシートの中間にある床の蓋はテーブルを設置するための固定具のようだ。

ボックスシートがそのままに活かされているという点が素晴らしい。キハ40の良いところはボックスシートの多さである。

扇風機のスイッチは健在。

五稜郭を出て、桔梗、大中山のあたりは列車左側に広がりのある風景が広がり、中々良い車窓を得られる。今までこの区間を乗車する際は、森駅から先で内浦湾を眺めるために進行方向に向かって右側席を意識的に選択していたのだが、この日は朝の列車ということもあり、直射日光を避けるため左側に乗車した。結果的に左側の車窓の良さを発見することとなった。

新函館北斗を出ると次は仁山駅。

新函館駅から仁山駅の標識が見えてきた。新函館北斗からの区間はずっと上り勾配で、キハ40はエンジンを唸らせながら走って行く。

仁山駅構内が見えてきた。勾配の途中に駅があることがこの写真からわかる。左手に写っている線路は元々加速線として使用されていた側線である。

列車左手に見える側線。これが仁山駅の加速線である。勾配の途中にある仁山駅に下り客車列車が停車すると、この加速線に入ってから発車したという記録がある。Hideki Uegamiさんの 「I love Switch Back」というウェブサイトに仁山駅の加速線について詳しく解説されているので、仁山駅へ行かれる方は是非このサイトを一度ご覧頂くことを勧めたい。

駅構内も上り坂は続く。大沼寄りの曲線上にホームがある。

7:52、定刻通りに仁山駅へ到着。下車したのは私のほかに老夫婦2名。乗車客はいなかった。上り勾配発車でブレーキを緩解しきる前に力行開始。キハ40 1809は上り勾配をゆっくりと発車していく。

仁山駅の構内は緩やかな曲線を描いている。この線形、好きである。

予想外だったのがコレ!仁山駅ホームは板張りがあったのだ。ステップを踏む度に板張りホームならではの心地よい感覚が足から伝わってくる。交換設備のある駅で板張りホームを備えているのは、根室本線の古瀬駅(2020年3月14日廃止)以外思い当たらない。

ホームに板張りが使われている理由は恐らく下の小川。構造上軽量にしたかったのだろう。

仁山駅は素晴らしき木造駅舎が現役である。エンジ色に塗られた屋根には雪国らしく、雪止めが備えてある。クリーム色で化粧された板張り外壁は屋根の色とマッチして非常に落ち着きのある外観となっている。

手歯止め配備個数4個、制動靴配備個数2個。勾配途中にある駅を物語っている。制動靴とはカーキャッチャーのことで、車両の逸走を防止するための道具のこと。

出入り口の庇を支える柱は下半分が交換されている。

柱の継ぎ目はテトリスのようにはめ込んで鋲で留めてある。よくぞこんなにピッタリとはまるように製作したものだ。

風情ある駅舎の入り口。


朝日に輝くラッチと歴史を感じさせるデザインのドア。函館駅からたった数駅でこんな素晴らしい駅があったとは思いも寄らなかった。

待合室内は格子天井と木製のベンチのある古いつくり。大きな窓が多いせいか、とても室内は明るい。コンクリート敷きの床は埃や虫の死骸などが一切無く、非常に清潔に保たれていた。

ベンチに座って出入り口を眺めて見る。この駅には窓口や荷物台の名残が無い。元は信号場で、仮乗降場的に旅客営業していたため、そもそも窓口が設けられなかったのだろうか。写真右端にあるのは駅ノートと額に入れられたイラスト。

駅ノートの書込は結構多かった。魅力的な駅でありながら、比較的列車本数が多いとあって、訪問者が多いのだろう。自分も先人達に習って一筆残させてもらった。

ご覧の通り、発着の本数は結構多い。運賃表にある池田園流山温泉銚子口は過去帳入りしてしまった。

駅の正面もまた風情のある外観となっている。

こちらはトイレと手洗い場。

駅前の目と鼻の先にはニヤマ温泉あじさいの湯、そしてニヤマ温泉ホテルN・Kヴィラという宿泊施設もある。とても閑静で雰囲気の良い土地にあるだけに、できれば一泊してみたいものだ。

特急北斗が通過してゆく。北海道新幹線が開通した後は新函館北斗駅に停まる全ての特急が仁山回りとなり、下り特急も通過するようになった。この駅の交換設備が依然にも増して重宝されているはずである。

3062レ札幌タ発、越谷タ行きがやってきた。下り勾配で速度を抑えながら構内を走っていく。

2面2線からなる構内は構内踏切で接続されている。

上りホームへ上がると駅舎全景を見上げることができる。スロープが画に加わって、上りホームからの駅舎も中々素晴らしい。

上りホームの函館側端部に来ると、この駅が勾配の途中にあることを実感できる。

上りホームから函館側を眺めて見る。20両編成の貨物列車待避が可能なように有効長はかなり大きくとられている。

駅名標と名所案内。

往路で乗車したキハ40 1809が大沼公園で折り返し、函館へと戻っていく。この列車は見送り、もう一本後の列車で駅を後にする予定である。この余裕をとった理由は加速線を見るためで、さらなる滞在時間が必要だったのだ。

駅前の踏切からは向かい側の藤城線側にある城岱牧場を遠望できる。高台の高原にある仁山駅からの景色は実に眺めがよく清々しい。仁山駅から新函館北斗に向かって左側は夜景が綺麗で、上り北斗星に乗車していると函館駅へ近いことを実感するところであった。

仁山駅構内の函館側をズームアップすると右側に分岐している線路が見える。これが加速線で、ポイントの摺動部には潤滑剤が塗布され、分岐機能は健在だった。

駅を背にして線路沿いの未舗装路を歩き、加速線を見に行ってみる。

手前が加速線、奥が本線。勾配のある本線と平坦な加速線の位置関係が一目瞭然。加速線は途中からさらに分岐している。

何故加速線が途中で分岐しているのかは謎である。加速線は基本的に常時空けておく必要があって、保線車両の留置をする際には分岐した先に入れるのではなかろうか。

構内配線のイメージ図を描いてみた。大沼方面へ向かう列車が勾配途中にある仁山駅で落ち葉や雪などで起動できない場合は、一度加速線へ後退し、そこから発車するのかもしれない。構内で下り線に接続されているので、信号機能の点で加速線まで後退しやすい。20パーミルの勾配途中に駅ホームがある特殊性ゆえの設備であり、頼もしいものだ。客車列車時代は実際に加速線に入った履歴があるようだ。現在は保線車両の留置線としての機能が主と思われる。

加速線の観察を終えて、駅に戻る。やってきたの2番目の下り列車、普通長万部行き。

貴重になってきたキハ281系使用の北斗2号が通過。

9:18発の普通函館行きが定刻通りにやってきた。乗車するのは自分含め鉄人2名。

車内は比較的混んでいて、ボックスシートは全て埋まっていた。自分は最後部のロングシートに座り、車窓を堪能しつつ仁山駅を後にした。動画内0:45頃およぼ10秒間、加速線が映っている。

いやはや、仁山駅がこんなに素晴らしく面白い駅だとは思わなかった。周囲の民家は3軒ほど、高原調のさわやかな雰囲気に、良い景色、板張りホームに風情のある木造駅舎。そして交換設備に加速線の存在と魅力満載。函館近辺を鉄旅する方には仁山駅訪問を勧めたい。



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