2019年3月29日金曜日

上高地帝国ホテル

帝国ホテルといえば、日本を代表するホテルの一つである。長い歴史で培われた格式とホスピタリティーによって、一流ホテルとして確固たる地位を築いてきた。この度、帝国ホテル上高地で2泊し、父の喜寿祝いをした。滞在の感想は「素晴らしい」の一言に尽きる。英語でいえば、「great」より、むしろ「excellent」としての素晴らしさである。両親も大いに満足してくれ、とても良い喜寿祝いとなった。


ゴールデンウィークから11月上旬という限られた営業期間ということもあり、2月1日の予約開始日にはほぼ全ての週末が埋まってしまうそうだ。予約開始日には100名体制で電話予約に応じているとのことで、凄まじい人気を物語っている。

私自身、予約開始直後に電話予約を試みた。第一希望日はベランダ付ルームが予約一杯とのことで、第二希望の日程での予約となった。結果的には天気に恵まれ、両親にベランダ付ルームを利用してもらうことが出来たので良かったと思う。

上高地帝国ホテルは大正池と河童橋の間に位置していて、どちらへもアクセスがしやすい。


両親に宿泊してもらったのは、ベランダ付ルーム。ベランダ付の部屋は穂高連峰側にあるので、ベランダから美しい穂高岳の山容を眺めることができる。お邪魔してベランダを撮影させてもらった。因みに私が宿泊したのはツインAである。

正面玄関と逆側にあたるベランダ側の外観。石組みの地階部分と木材を活かした1~3階、落ち着いたエンジ色の屋根構えと暖かみのある山小屋風の建物である。コンクリートの角張った印象を与えない外観となっている。

ホテル内の中央にある一際大きな暖炉。大きなフードは地階から2階までに及ぶ。17時になると照明が落とされ、火入れイベントが始まる。

スタッフの方が薪の根元に種火を入れ、フイゴで風を送る。このとき集まった宿泊客はフイゴのタイミングに合わせて拍手でリズムをとる。リズムに合わせて火はどんどん勢いを増していき、宿泊客は火力を加勢しているような気持ちになる。面白いイベントであった。

上高地帝国ホテルには「アルペンローゼ」、「ダイニングルーム」、「あずさ庵」の3つのレストランがある。初日の夕食はカジュアルレストラン「アルペンローゼ」でとることにした。アルペンローゼは”カジュアル”と名のつくとおり、予約不要で、カレーやスパゲティ、チーズフォンデュ等、単品で頼めるようなメニューもある。アルペンローゼは昼食も営業をしており、昼食時間帯は宿泊客以外も利用できるようだ。

私がオーダーしたのは、「信州ハーブ鶏の山賊焼きと上高地帝国ホテルカレー」である。長い歴史の中で完成したカレーとのことで、楽しみにしていた。カレーは様々な具材が良く煮込まれていて、手間暇かけていることが容易に想像できる。辛さはマイルド、味は言うまでもなく素晴らしい。御飯の上に乗っているハーブ鶏がまた美味しかった。今までのベストと感じている「剣淵の駅前旅館のカレー」と比較できない別の美味しさである。甲乙つけ難しというか、どちらにも各々比較できない魅力がある。

最後はアイスクリームで〆。


翌朝は「あずさ庵」での朝食。
和食のクオリティもやはり高い。


滞在2日目は上高地の散策を楽しんだ。上高地バスターミナルから上高地帝国ホテルへは車道に沿って整備された歩行路があり、車道を歩かなくてもホテルへと戻ることができる。


2日目の夕食はダイニングルームを予約した。17:30になるとチリンチリンとベルが鳴らされ、ダイニングルームがオープンとなる。ダイニングテーブルには専用のお皿が配されている。

予約していたのは神河内(かみこうち)コース。ダイニングルームの雰囲気はフォーマルで優雅。と言いつつも、スタッフの方が時として笑いを誘うようなサーブをしてくれるので、とても楽しいディナーとなる。写真はメインディッシュのサーロインステーキである。今まで食べたことのないサーロインステーキで、赤身自身にうま味の詰まった脂身が入っているような、語彙が不足して私の表現ではうまく伝えられない、不思議かつ極めて上品な美味しさであった。

ホテルの計らいで、デザートに喜寿祝いのプレートを用意して頂いた。宿泊予約時に「喜寿を祝うんです」とさらっと伝えたくらいだったのだが、まさかこのような配慮があるとは予想だにしなかった。両親共々感激であった。

食後は紅茶でディナーの終焉を楽しんだ。

出発日の朝はダイニングルームで洋食とした。私がオーダーしたのは、アメリカンブレックファースト。勿論美味しいのだが、驚いたのは母がオーダーしたフレンチトーストの味で、朝食の際にはフレンチトーストをオススメしたい。

出発日朝食の〆はコーヒー。

宿泊すると、このような記念のプレートをお土産にもらえた。部屋に包んでおいてあったので、チョコレートなどの御菓子かと勝手に思っていた。開けてみるとビックリ。それはコレクションにしたくなるような記念プレートで、リピートへと心が傾くプレゼントである。

上高地帝国ホテルの魅力は何かといえば、食事や景観はさることながら、第一に細かい気配りや、行き届いたの配慮あるホスピタリティだと思う。両親が大変喜んでくれたのは、このホスピタリティあってこそである。お祝い事や記念日などで帝国ホテル上高地を利用すれば、間違いなく良い思い出を残すことができる。いつの日か私自身のためにも宿泊する機会を得たいものだ。それ日まで頑張って働こう。
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その他上高地の写真
ホテルから大正池までは歩いて30分ほどだろうか。早朝の朝靄のかかる大正池はとても美しかった。

大正池からホテルへ戻る途中で猿の親子連れと遭遇。

ホテルから河童橋を目指して、梓川の左岸を歩いて行く。ゴミ一つない散策道はよく整備され、歩いていてとても気持ちが良い。梓川が大きく曲がるところでは穂高岳が良く見える。

河童橋は全ての観光客が集結する場所といっても過言ではない。橋と穂高岳の組合せはあまりにも有名な構図である。

河童橋から眺める梓川と穂高岳。

上高地へ訪れるのならば、是非とも明神池まで足を伸ばすことを勧めたい。池に点在する島が織りなす風景が実に素晴らしい。島には食べるものがあるのか、猿が島から島へと泳いで渡っていた。

水の透明さ、水面の穏やかさによって、
池が鏡のような状態になっていた。

上高地の猿は毛足が長いように見える。
冷涼なところだからだろうか。

上高地帝国ホテルへの宿泊に際し、旧神岡鉄道を利用したレールマウンテンバイク「ガッタンゴー」も体験してみた。ちゃんと線路の継ぎ目ではガタンという音がして、鉄道らしさが存分にある。線路の上を自転車目線で走れる経験は非常に面白かった。

2019年3月23日土曜日

音威子府駅

音威子府駅は宗谷本線と天北線の結節点として、かつては鉄道の要衝であった。今も音威子府村の中心駅としてすべての特急列車が停車し、普通列車は長時間停車するものもある。音威子府駅にはここにしかない独特の有名駅そばがあり宗谷本線の魅力を増している。宗谷本線の鈍行列車に乗り、駅そばを楽しみにやってきた。




音威子府は旭川から北に130km弱。そばで有名なほか、クロスカントリースキーの大会が開催される地である。


名寄から乗ってきた普通列車が音威子府駅へと到着した。この列車は音威子府で少々の停車時間がある。この時間に、かの有名駅そばを堪能する予定でやってきた。駅そばは短時間で準備が出来、またお客さんの食べる時間も短い。少々の時間でささっと食べられる、駅との相性抜群のファストフードである。

駅そばコーナーは駅舎の一角にある。有名なそばとあって、おみやげのそばも売っている。


オーダーしたのは、天玉そば520円也。最大の特徴である黒い麺の色は、蕎麦の実の殻が含まれているからだそうで、通常のそばと比較して風味や栄養成分が異なる。さすが有名そばだけあって非常にうまい。中には2杯食べる客もいるようで、それも納得の味である。

列車からのお客さんが続々と蕎麦をオーダーする。
音威子府駅へ来れば、考えることは同じようだ。

音威子府駅には廃止された天北線の資料館がある。中央の模型は昔の音威子府駅を再現していて興味深い。多数の側線、ターンテーブルなどジャンクション駅であったことが良くわかる。

音威子府駅で長時間停車するダイヤは昔から続いていて、キハ54がここで休む姿はお馴染みの光景である。とは言いつつも普通列車の減便がされてからは長時間停車どころか、そもそもここを通過する普通列車が減ってしまい、停車時間中にそばを食べることが困難になってしまった。

音威子府で普通列車と交換待ちをしていたのは、稚内からやってきたDE15型ラッセル車。宗谷本線は日中にラッセル車が走ることで有名である。

発車を待つ稚内行きキハ54を跨線橋から眺めてみる。駅構内はきれいに除雪がされていた。蕎麦を堪能した後、またキハ54に乗り込み、目的地の糠南駅を目指した。


こちらは夏の音威子府駅の姿。やはりキハ54は1番線に停車している。1番線はホームが短く普通列車専用として使われているようだ。

特急サロベツを待つ乗客が3番線に集まる。

やってきたのは、今は無きキハ183スラントノーズ車を先頭にした特急サロベツ。列車は大盛況でほぼ満席であった。

2019年3月の時点で、駅そば屋さんは休業中のようである。(→2019年4月25日に営業を再開!)いずれ営業が再開されることを願い、また再開されれば、音威子府のそばと剣淵のカレーを含めた宗谷本線の鉄旅を計画したいと思う。

2019年3月18日月曜日

寝台特急「サンライズ瀬戸」ノビノビ座席乗車記

寝台特急サンライズ出雲号、同瀬戸号には個室寝台とは別に、ノビノビ座席と称される寝台料金不要の指定席がある。フェリーの雑魚寝スペースとは異なり、窓際には仕切りがあり、隣と顔合わせにならない構造となっている。完全に横になれて、しかも寝台料金不要という夜行バス顔負けのゴロ寝座席とあって人気は高い。今回はサンライズ瀬戸号のノビノビ座席を、東京駅から香川県の坂出駅まで利用してみた。

この日のサンライズ瀬戸号の乗車率は寝台、ノビノビ合わせて30%程度で、閑散としていた。これまでの乗車では、満席かほぼ満席状態であったので、この利用状況には驚いた。閑散期ということもあったのだろう。車掌さんに聞いてみると、「これほど空いているのは初めてです」と仰っていた。混雑時には車内のシャワー券が売り切れてしまうので、それを予想して予め銭湯に入ってきたのだが、この日は拍子抜けするほど空いていた。


東京駅9番線に入線したサンライズ瀬戸・出雲号の14両編成。落ち着いたカラーリングや独特の窓配置が織りなす雰囲気は、通勤電車と一線を画している。

ホームからは木目調の個室の様子が目に入る。帰宅客で雑踏するホームとは全く異質の時間が流れているように見える。疲れた仕事帰りにこれを見れば、「この列車に飛び乗って旅に出てしまいたい」、「いつかこの列車で旅に出たい」、そんな気にさせられる。


22時前にも関わらず、東京駅9・10番線ホームには多くの帰宅客が行き交う。お隣の10番線には上野東京ラインの列車がひっきりなしに発着している。上野東京ラインが完成してから東北、高崎、常磐の3系統の列車が来るようになり、東京駅の東海道線ホームは発着本数が大幅に増えた。平日21時台に東京駅を発車する東海道本線下り列車は実に15本、単純計算で4分に1本の列車が発着していることになる。

今宵の宿はサンライズ瀬戸号。

乗車するノビノビ座席は5号車である。指定席として示されているのがノビノビ座席であり、寝台との区別がつけられている。

5号車は車両中央部のすべての区画がノビノビ座席となっていて、やや小さい窓が特徴である。


9番線にはサンライズの乗車口がワイヤードボードに示されている。以前は9番線の案内に「岡山・出雲市・高松方面」と示されていたのだが、この表示は無くなってしまったようだ。


今宵の宿へと入る

こちら5号車ノビノビ座席の様子。山側に通路があり、海側に計28席のノビノビ座席が配されている。

A・B席は下段、C・D席は上段という区分となっている。私の区画は上段の端となる1C席である。上段は下段と比較して解放感があり、下段より好みである。

隣の区画とは仕切り板があり、海側に頭を向けて寝れば、寝返りをうっても隣の人と顔を合わすようなことはない。コップや読書灯が備えられている。

各区画にはエアコンの吹き出し口まで備えてある。昔の開放式寝台では寝台毎にエアコンの調整が出来なかったこともあり、冬期に上段へ乗ると暑すぎると感じることもあった。サンライズは区画毎に吹出し量を調整できるので、この点はとてもありがたい。

車内は至って静粛であった。
ホームの雑踏とは対照的である。

各座席の区画にコンセントは無く、通路に一つある。ノビノビシート利用者はこの共用コンセント一個を使うしかない。共用1口とあってか、分岐タップを使い占有を避けながらの利用を見たことがある。

5号車の目の前にはNewDaysがあり、夜食の調達が容易である。


(動画10:00)
0:17 東京駅発車         
0:55 ひかり号名古屋行きとの併走 
1:35 案内放送開始        
4:14 英語案内放送開始      
5:32 英語案内放送終了      
7:39 品川駅通過         
8:05 ひかり号名古屋行きに追いつく
9:54 大井町駅通過        
サンライズ瀬戸・出雲号は22時東京駅を定刻通りに発車した。同時に発車したひかり号が先行しつつも、品川駅を通過するサンライズ号が品川駅通過時に追いつく。その後大井町駅付近までの走行車窓。


サンライズ瀬戸・出雲号は東海道、山陽道を駆け抜け、定刻通りに岡山駅へ到着した。熱海駅を出てから岡山駅到着直前までぐっすりと寝られた。やはり完全に横になれるというのは大きな利点である。床が多少硬いので、気になる人はコンパクトなエアマットなどを持って行くと良いだろう。

岡山駅では相方のサンライズ出雲との分割作業がある。サンライズ乗車の一大イベントとして多くの乗客が見守る。

サンライズ瀬戸の5号車の前には売店がある。ここで朝食を調達することが可能である。

岡山駅から7両編成になったサンライズ瀬戸号は宇野線、瀬戸大橋線を通って四国へ向かう。瀬戸大橋線では朝の瀬戸内海を眺めることが出来る。サンライズ瀬戸号のハイライトだ。

児島駅~瀬戸大橋車窓動画(6:29)
3:03~瀬戸大橋区間
本州側最後の駅、児島駅を出ると瀬戸大橋区間に入る。風光明媚な瀬戸内海の車窓は素晴らしい。瀬戸大橋区間は鉄橋走行らしい走行音が聞こえる。

石油基地や火力発電所が見えてくると、そこは四国である。

終点の高松までは乗車せず、特急列車への乗り換えのために坂出駅で下車した。サンライズ瀬戸号から四国の特急列車への乗換えに乗継ぎ割引が適用されるので、サンライズ瀬戸の切符購入と同時に乗り継ぎ列車の切符を購入するとおトクである。乗換列車の特急料金が半額となる。

一晩お世話になったサンライズ瀬戸号が高松へと発車していった。サンライズ号の旅はすこぶる快適である。これからもどんどん利用したいと思う。




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