2018年12月28日金曜日

静狩駅

室蘭本線 静狩(しずかり)駅には趣のある木造駅舎がある。小幌駅から乗車した長万部行き普通列車が静狩駅へ停車したとき、この大きな木造駅舎には強烈に魅了された。スケジュール上、このときには下車できなかったのだが、必ず機会を作って訪問しようと心に決めたのだった。後に訪問してみると静狩駅の木造駅舎は期待に違わぬ素晴らしいものであった。

静狩駅は噴火湾に面した長万部町静狩地区にある。長万部から室蘭本線で東室蘭方面へ向かうと、北海道らしい広がりのある風景の中、列車は高速で駆け抜けていく。静狩から東側には山肌が海岸まで迫り出す険しい地形が待ち受けており、駅からその山容を眺めると、この駅が当初終着駅であったことが頷ける。開業は大正12年とのことで、非常に歴史ある駅である。


朝一番に長万部を発車する室蘭本線の普通列車に乗車し、静狩駅を目指す。長万部からの乗車客は無く、私1人の貸し切り状態であった。


室蘭本線の長万部から静狩駅の区間は線型が良く、ほぼ直線である。キハ40は車齢を感じさせない高速で安定した健脚ぶりで、静狩駅へと向かっていった。

時速90キロ以上で室蘭本線を駆けていく。過去にキハ56系で走っていた急行「すずらん」もこのような走りをしていたのだろう。


長万部から静狩駅は一駅。とはいえ、駅間距離は10kmほどあるのでそこそこ時間がかかる。

静狩駅の標識が見えてきた。信号は下り本線が青、中線が赤ということで、本線に入線していく。


そして静狩駅へ到着。ここからの乗車客はおらず、私を降ろしたキハ40は乗客ナシの状態で発車していった。

静狩駅の先には静狩峠が横たわり、その地形はあたかも通せんぼをしているかのようだ。wikiによれば、「『しずかり』はアイヌ語の「シツカリ」(行き止まり)から名づけられており...」とのことで、納得の行く地名である。

列車が去ると、あたりには静けさだけが漂う。外壁は化粧がされていない、木板そのまま。

駅舎本屋は上り線側にあり、下り線ホームとは構内踏切でつながれている。

長万部方に目をやると、真っ直ぐに線路が延びていた。ここから長万部駅の間は高速で駆け抜けていくのであろう。

駅舎には木製の駅名標が掲げられていた。おしゃまんべの文字はステッカーで示されている。長万部方の以前の隣駅は旭浜駅であった。

大きな木製引き戸を開けて、駅舎へと足を踏み入れる。

雪切室では昔使われていたと思しき黒板や、味わいのある手すり、白い引き戸などが見られる。

誰もいない駅舎には、穏やかな朝日が差し込んでいた。
待合室は内装も含め手入れが行き届いている。

駅舎内の木製白ベンチには座布団が掛けられている。

このようなローカル駅には欠かせない駅ノート。私も次の列車を待つ間に一筆残した。

「静狩、小幌海岸」という絵が掛けてある。下の説明書きを確認すると、駅の整備をした静狩町民の皆さんへ感謝の意を込めて長万部駅長さんが寄贈した絵とのこと。JRと地元のとても良い関係性が垣間見えるものであった。

駅前を見るべく駅舎を出てみる。

大きな筆書きの駅名板が掲げられた入口。
木板が重ねられた外板とエンジ色の屋根と相まってとても良い雰囲気である。

駅舎の奥にある小さな建物はトイレである。

駅前には数軒の民家がある。
主要な道路と離れているためか非常に閑静だ。

噴火湾は駅のすぐ近くである。渡島駒ヶ岳や小幌海岸、室蘭が遠望できるかと浜辺へ出てみたのだが、残念ながらガスがかかってきて、視界が塞がれてしまった。

列車の時間が迫ってきたこともあり、駅へと戻る。

程なくして3両編成の普通下り列車がやってきた。

静狩駅から乗車したのは自分1人。車内は空いていたが、伊達紋別方面へ通学する高校生達が何人か乗車していた。


2018年12月21日金曜日

渡島沼尻駅

函館本線 渡島沼尻(おしまぬまじり)駅は古くからの木造駅舎が残る魅力的な駅である。駅の周囲には神社と数軒の民家があるだけで、とても静かな環境である。古い木造駅舎、静けさ、周囲の人工物の少なさ、交換設備有、と私の好きな要素が揃った駅だ。

渡島沼尻駅は函館駅から普通列車で80分ほど。
函館~森の区間では普通列車の数自体は少なくないが、大沼公園を通る本線経由の列車があるため、この駅への列車は限られる。私が訪問した当時で、朝の数本が停車したあと、次に来るのは15時台であった。

函館からの普通列車は間もなく渡島沼尻へと到着する。

木造駅舎が見え、気分が高ぶる。
草むす待避線を進みホームへと近づいていく。

降りたのは私1人であったが、地元の高校生と思しき方が1人乗車された。

列車は対向列車と交換することなく、発車していった。
キハ40は長い構内を抜け、本線へと向かっていく。

遮断機のない構内踏切の先には古びた木造駅舎がある。


駅舎の待合室は建物のほんの一部。
限られたスペースには4つほどのプラベンチが並んでいる。

待合室の奥には駅ノートが置いてある。

待合室から見えるのはガランとした駅前の風景。


駅舎の他スペースは、保線作業の関係の詰所的な役割を担っているようだ。


こちらの建物はトイレ。


だんだんと晴れ間が広がってきた。明るい陽の光を浴びた木造駅舎を撮影できるとはラッキーなことこのうえない。屋根の錆び具合が駅舎の長い年月を強調しているかのようだ。

駅から道路に出ると、神社と4件ほどの民家がある。
道路を走る車がほとんど来ないこともあり、とても静かである。

神社のお参りをする。
境内は良く整備されていた。

境内の一角には開拓会館という建物がある。
地域の集会所的な役割なのだろうか。

駅への入口は木々に囲まれている。

青空の広がった清々しい雰囲気のなか、
2番線の短いホームが佇んでいる。

構内踏切の先には駅の裏手へ続く小径があるので、こちらを探訪してみる。

草むす道を進んでいくと、前が開けてきた。

景色が開けた先には1件の民家があった。駅への小径は、こちらに住む方が駅の行き来やその先の神社、集会所へ向かうときに利用するのかもしれない。

小径を駅へと戻る。この先に駅があるとは思えな景色だ。

駅へ戻ると、貨物列車がやってきた。砂原線は森駅から大沼駅へ向けて緩勾配であるため、上り貨物列車は全て渡島沼尻駅を通って五稜郭へと向かっていく。

貨物列車が駅を通過する。1番線が本線扱いと見えて、2番線の線路と比べると、コンクリート枕木かつ線路規格が高いようだ。

乗車する上り普通列車が来るまで駅舎の撮影にいそしむ。
木造駅舎を被写体とすると、もっと良いアングルがあるのでは無いかとあれこれ試行錯誤をするため、あっという間に時間が過ぎてしまう。

駅の表情は陽のあたり方で時々刻々と変わっていく。

1番線にて列車の到着を待つ。
駅から見た函館側の景色もまた良い。

ホームの端には丸々と太ったトカゲが歩いていた。
しっぽが完璧に残っていて、たくましさを感じる。

やがて踏切が鳴り出し、列車の接近が告げられる。

やってきた普通列車はキハ40単行。乗車したのは私1人であったが、対照的に車内は驚くほど混んでいた。



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