静狩駅は噴火湾に面した長万部町静狩地区にある。長万部から室蘭本線で東室蘭方面へ向かうと、北海道らしい広がりのある風景の中、列車は高速で駆け抜けていく。静狩から東側には山肌が海岸まで迫り出す険しい地形が待ち受けており、駅からその山容を眺めると、この駅が当初終着駅であったことが頷ける。開業は大正12年とのことで、非常に歴史ある駅である。
時速90キロ以上で室蘭本線を駆けていく。過去にキハ56系で走っていた急行「すずらん」もこのような走りをしていたのだろう。
長万部から静狩駅は一駅。とはいえ、駅間距離は10kmほどあるのでそこそこ時間がかかる。
静狩駅の標識が見えてきた。信号は下り本線が青、中線が赤ということで、本線に入線していく。
そして静狩駅へ到着。ここからの乗車客はおらず、私を降ろしたキハ40は乗客ナシの状態で発車していった。
静狩駅の先には静狩峠が横たわり、その地形はあたかも通せんぼをしているかのようだ。wikiによれば、「『しずかり』はアイヌ語の「シツカリ」(行き止まり)から名づけられており...」とのことで、納得の行く地名である。
列車が去ると、あたりには静けさだけが漂う。外壁は化粧がされていない、木板そのまま。
駅舎本屋は上り線側にあり、下り線ホームとは構内踏切でつながれている。
長万部方に目をやると、真っ直ぐに線路が延びていた。ここから長万部駅の間は高速で駆け抜けていくのであろう。
駅舎には木製の駅名標が掲げられていた。おしゃまんべの文字はステッカーで示されている。長万部方の以前の隣駅は旭浜駅であった。
大きな木製引き戸を開けて、駅舎へと足を踏み入れる。
雪切室では昔使われていたと思しき黒板や、味わいのある手すり、白い引き戸などが見られる。
誰もいない駅舎には、穏やかな朝日が差し込んでいた。
待合室は内装も含め手入れが行き届いている。
駅舎内の木製白ベンチには座布団が掛けられている。
このようなローカル駅には欠かせない駅ノート。私も次の列車を待つ間に一筆残した。
「静狩、小幌海岸」という絵が掛けてある。下の説明書きを確認すると、駅の整備をした静狩町民の皆さんへ感謝の意を込めて長万部駅長さんが寄贈した絵とのこと。JRと地元のとても良い関係性が垣間見えるものであった。
駅前を見るべく駅舎を出てみる。
大きな筆書きの駅名板が掲げられた入口。
木板が重ねられた外板とエンジ色の屋根と相まってとても良い雰囲気である。
駅舎の奥にある小さな建物はトイレである。
駅前には数軒の民家がある。
主要な道路と離れているためか非常に閑静だ。
噴火湾は駅のすぐ近くである。渡島駒ヶ岳や小幌海岸、室蘭が遠望できるかと浜辺へ出てみたのだが、残念ながらガスがかかってきて、視界が塞がれてしまった。
列車の時間が迫ってきたこともあり、駅へと戻る。
程なくして3両編成の普通下り列車がやってきた。
静狩駅から乗車したのは自分1人。車内は空いていたが、伊達紋別方面へ通学する高校生達が何人か乗車していた。