[読み] ちっぷべつ
[路線] JR北海道 留萌本線
[隣駅] 北秩父別(2.4km)←秩父別→(5.0km)北一已 kmは営業キロ [位置] 北海道雨竜郡秩父別町字秩父別
43.768790N, 141.967728E
留萌本線、秩父別駅には大きな木造駅舎が現役で残っている。以前一度立ち寄ったことがあるものの、その時は深川十字街から路線バスでアクセスし、立ち寄っただけであった。当時の目的が北秩父別駅の訪問と列車乗車だったので、この駅での乗下車は出来ず、いつか列車で来たいと願っていた。
秩父別駅は秩父別町の中心にある。この地域は稲作をはじめとした農業が盛んで、かつては駅が農産物の出荷において、大きな役割を担っていたと思われる。
出発は留萌本線の起点、深川駅。現在6番線は18:10発の列車でしか使用していない。かつては深名線があり、6番線からも多数の列車が発着していた。ここからキハ56使用の列車に乗って朱鞠内駅へ出発したのは良き思い出である。
今回は旭川からの往復で秩父別駅へ訪問。旭川8:10発の岩見沢行普通列車は737系2連でカムイトンネルを快調に抜け、定刻通りに深川駅へと到着した。函館本線の旭川寄りは50系51形、711系、その後721系と3両編成以上の王国であったが、いまや普通列車は737系2連が主体となった。それだけで運べる乗客数なのだろう。
深川駅9:13発の石狩沼田行が4番線へと入ってきた。キハ54 528と元急行礼文用の車両である。元急行用の車両は3両のみしかないので遭遇したら、幸運である。
キハ54 500番台を特徴づける赤いラインは腰回りのみが基本。元急行用にはそれが上側にもある。
ガラガラの車内で9:13の発車を待つ。窓を開けると北海道らしいホーローの縦書き駅名標が目に入る。そのうえにあるキハ1という国鉄書体の票は気動車単行の停止位置だろうか。
キハ54の車内は新幹線0系で使用された転換クロスシートが配されていて、テーブルまで備えられている。
テーブルを引き出して、くるりんぱ。ミニテーブルの登場。
2台のエンジンを震わせて、キハ54 528は深川駅を発車する。駅構内を出ると右に大きくカーブして秩父別方面へと向かっていく。車内は鉄人数名のみであった。
木造駅舎の北一已駅に到着。短くなった留萌本線に残る木造駅舎は、北一已と秩父別のみ。
間もなく秩父別駅。前方デッキに出て下車の準備をする。
雨滴が付く貫通扉越しに秩父別駅が見えてきた。幸いにも雨はほぼ止んでくれており、駅訪問を存分に堪能できそうだ。
秩父別駅で下車したのは自分のみ。他の旅行客は全て石狩沼田まで乗車するようであった。
ホームは砂利形式。風情のある駅舎とベンチがあり、ここでゆっくり過ごせるのは幸せなこと。
駅舎の前に置かれた、鮮やかなブルーのベンチ。板張りの背景と相まって、レトロ感を掻き立てている。
駅名標は交換されたばかりなのか、真新しさが感じられる。
静かに佇む木造の駅舎を彩る、鮮やかなオレンジ色のマリーゴールド。雨上がりのしっとりとした空気の中、花々が生き生きと輝いていた。
風雨にさらされて色が剥げ落ちた木柱や、ひび割れたコンクリートの地面。この駅が歩んできた長い歴史を静かに物語っているかのよう。
待合室は広い。ここには窓口があり、切符や手荷物がやりとりされていたはず。今は当初の目的を終えた台に観葉植物や駅ノートなどが置かれている。
待合室には8席のプラベンチがある。すべてに座布団が備えられ、地元の方の手が良く加わっていることがわかる。
秩父別駅は2025年7月時点で下り6本、上り7本の列車がある。石狩沼田と並んで通学生の利用が多いだけあり、比較的利用しやすい列車が設定されている。
運賃表にある留萌本線はたったの4駅。かつて増毛までの66.8kmの距離をつないでいた線路は、全長14.4kmにまで短くなってしまった。残った区間も2026年3月末日で営業を終える。
駅ノートに訪問の記録を残す。旅行者のメッセージやイラストにはいろんな思いが詰まっていた。
駅舎は板張りとなっており、大変風情がある。駅舎本体はかなりの歳月を経ているものの、外板は新調されていた。新しい木材ならではの明るい色調があり、温かみがある。屋根には北海道らしく雪止めが備えられている。
秩父別駅の顔たる出入口には手書きの味わいある駅名版が掲げられ、利用者を迎えている。
駅前は家屋が多く、秩父別駅利用の通学者が多いのも納得。
折り返しの9:50発4924D旭川行の時間が近づき、ホームへ戻る。石狩沼田側を見ると線路が湾曲しているのが確認でき、かつて交換設備があったことを偲ばせていた。
発車間際になると地元客が一人現れ、私を含む2名が乗車した。さらに次の北一已駅で地元利用客らしき年配の女性1名が乗車した。車内10名の乗客の内3名が一般客、7名が鉄分を含んだ方々であった。
深川駅へ戻ってきたキハ54 528。発車間際になると旭川へ向かう多くの乗客が乗ってきて、ほぼ全ての座席に誰かしら座っている状態となった。
4924Dは留萌本線から函館本線に入り、旭川まで直通する。深川を出るとゴトゴトと分岐線を渡り、特急や貨物の走る大幹線を高速で進んでいく。
キハ54は時速90kmで、カムイトンネルを快調に飛ばしていく。かつて急行「礼文」として走っていた頃も、特に旭川〜名寄間で、2台のエンジンを活かした快足ぶりを発揮していた。
終着旭川へと到着した4924D。函館本線での走りは素晴らしく快調だった。留萌本線への訪問は、これが最後になると思うと少し寂しいが、好きな車両で素晴らしい駅に訪問でき、良い思い出を作ることができた。