[読み] はまたうら
日高本線、浜田浦駅は平原の中にポツンと佇む小駅である。利用者僅少により、2023年3月のダイヤ改正で廃止されることになった。過去、日高本線に乗車した際、車内から見た浜田浦駅の雰囲気がとても良く、廃止前に何としてでも訪問したかったのだ。2023年3月、最後の訪問チャンスを掴み、朝の上り列車で浜田浦駅へと降り立った。
[路線] JR北海道 日高本線
[隣駅] 浜厚真(4.3km)←浜田浦→(3.5km)鵡川
kmは営業キロ
[位置] 北海道勇払郡むかわ町田浦
※2023年3月18日を以て廃止されました。
浜田浦駅は苫小牧からおよそ30km離れた位置にある。ここから一駅走ると日高本線の終点鵡川駅となる。
日高本線の起点、苫小牧駅。1番線にはキハ40 3連の鵡川行き一番列車が5:45の出発を待っていた。早朝の苫小牧駅構内は人通りが少なく静寂で、キハ40のアイドリング音だけが響いていた。
3両編成に乗客は自分一人のみ。鵡川行き1番列車は実質的に上り列車への車両送り込みが目的になっているようだ。
早朝の勇払原野をひた走る。線形が良いこともあり、キハ40は高速で進んでいく。日高本線に乗れば、普段の生活では目にすることのできない、勇払原野の美しさを目の当たりにすることができる。
やがて東の空から日が上がりはじめ、徐々に明るさが増していく。キハ40の青ボックスシートに腰掛けて見る朝日は格別に綺麗であった。
キハ40 1785の車内に陽が差し始める。朝日の光は車内に穏やかな雰囲気を与えてくれる。
下り始発列車は目的の浜田浦駅を通過してしまうため、一度鵡川へ行き、その折り返しで浜田浦駅を目指す。列車は終着の鵡川駅へと到着する。
鵡川駅へ到着したキハ40の3連。鵡川駅は駅舎側でなく、下りホームが使われている。
6:24発苫小牧行き1番列車は、先頭車両が単行で走る。そのための切り離し作業が行われていた。後ろ側2両は続行の2番列車となる。
切り離された鵡川側2両の前面ガラスに対し、運転士さんがスプレーを噴霧している。曇り止めだろうか。
鵡川駅はむかわ町の中心にあるだけあって、待合室は広い。平成29年の特定日利用者調査では、鵡川駅は174人。苫小牧駅を除けば日高本線中、最も利用者数の多い駅である。
大変有難いことに、待合室には暖房が付けてあった。
折り返し苫小牧行き1番列車が出発を待つ。乗客は私の他にもう一人で、合計2名であった。平成29年の特定日利用者調査によれば、この列車の最大利用者は勇払~苫小牧で21名とのこと。単行でも全員が余裕をもって着席できる数だ。
鵡川から浜田浦までは時間にして4分ほど。前方のデッキに立ち、前面展望を楽しむ。浜田浦の標識があり、駅が近づいてくる。
浜田浦駅が見えてきた。ホームは短く、砂利形式のようだ。
6:28着の列車で浜田浦駅へ降り立ったのは私一人。乗降客は他にいなかった。続行する7:15発の苫小牧行きに乗車するまで、47分間の滞在を楽しむ。
列車が去った後の浜田浦駅は静寂に包まれる、と言いたかったのだが、実際のところ目の前の国道をそこそこのスピードで車が通過していくので、静かな環境ではない。しかし、駅の雰囲気はとても良いものであった。
こちらが浜田浦駅の待合室。コンクリートブロックの壁とトタン屋根で構成されている。ドアは無い。道内の待合室でドアが無い駅に出会ったのはここが始めてであった。元々利用者は多くなかったのだろうか。
トタン屋根には木材が打ち付けられ、補強されている。
待合室の壁沿いにはシンプルな木製長ベンチが備えられていた。朝ということもあって寒かったけど、待合室に入ると何だかホッとした。
待合室の入り口側には、運賃表と時刻表が備えられている。
列車は一日上下6本ずつ。2023年3月時点で日高本線は上下8本ずつの列車が苫小牧と鵡川を行き来しているのだが、浜田浦駅は内2本が通過する。浜田浦駅からの利用者は苫小牧方面に特化していたようだ。
浜田浦駅の駅ノート。ケースに防水のため・・・と書いてあったのだが、中は湿っていた。その理由は次の写真をご覧あれ。
待合室の壁には隙間が有り、ここから風雨が侵入していたようだ。
ホームから待合室と駅前を見るとこのような広大な景色が広がっている。駅のそばに民家は無い。目の前の道路は結構な頻度で車が走っていた。
ラッチとも違う錆びかけた黄色い柵が、ここからがホームですよ、と言わんばかりに2個立っている。
次の列車まで時間の余裕があったので、駅の北側をぶらぶら歩いてみた。踏切を渡った先には芸術的なオブジェが並べられていた。作者はロコ・ソラーレを応援していたのだろうか。
駅の裏手には広大な農地が広がっていた。実に北海道らしい広がりのある景色。夏に青々とした作物が整然と並ぶに違いない。
駅へ戻り、駅名標を観察すると、フレームの腐食が進んでいた。海が近いためか厳しい環境なのだろう。
定刻通り、苫小牧行き列車がやってきた。この列車に乗車し、浜田浦駅を後にする。
浜田浦駅から乗車したのは私一人で、降りる客はいなかった。キハ40 1724・1785は、ゆっくりと加速しながら浜田浦駅を後にした。浜田浦駅は2023年3月17日を最後の営業日として歴史の幕を閉じる。廃止されるのは寂しいが、最後に訪問できて、大切な思い出を残すことができた。