2018年6月4日月曜日

台湾南廻線 普通客車列車(普快車)乗車記

台湾には日本製の客車が定期の普通列車として走っている。スハ43の系統を組むその車両はまさに旧型客車の雰囲気を持っており、客車好きにはたまらないものだ。この車両は台湾南部を走る南廻線(枋寮Fangliao台東Taitung)を一日一往復だけ走る普快車に使われている。貴重な存在であり、これを目指して台湾へ行く日本の鉄人達も多いようだ。私もその例外でなくJ氏とともに、南廻線普快車を目指して台湾へ飛んだ。

2018年6月現在のダイヤは下記となっているようだ。
 枋寮10:55→台東13:21 列車番号3671
 台東16:00→枋寮18:21 列車番号3672
台湾の普通列車は普快車と区間車の種別がある。区間車のほうが運賃が高くグレードが高い。私の認識では区間車は冷房付き車両使用、普快車は非冷房の車両使用という区別である。現在非冷房の列車は旧型客車であるこの3671~3672列車のみで、すなわちこれが唯一の普快車である。因みに枋寮・台東間にはもう一往復の普通列車が区間車として走っており、こちらは莒光号で使用される客車(冷房車)を利用した列車となっている。


南廻線は台湾南方の枋寮(Fangliao)~台東(Taitung)を結ぶ。車窓が素晴らしく、ここを客車列車で窓を開けながらの鉄旅は最高である。高台を走る列車から美しい海を堪能できるほか、台東県と屏東県を分ける中央山脈に分け入る際には、荒々しい山肌を眺めることが出来る。


3671次普快車の起点となる枋寮(Fangliao)駅。

駅前ロータリーの向こうには石畳の通りが続いている。
この先には海が広がっているのであろう。


枋寮(Fangliao)駅はリニューアルされたばかりなのか、
利用して非常に心地よいものであった。

11時頃になると、枋寮駅のホームには
既に目指す普快列車が入線していた。
両開き扉を備えたインド製の
客車が入ることもあるようだが、
この日は3両とも日本製であった。
両端デッキにガラベンと正に旧客の雰囲気がある。

青地に白一本の帯というシンプルな塗色。
古めかしさと相まって実に素晴らしい雰囲気を出している。

車両の端から端まで並んだ窓は
両端デッキ車両ならではの整然さがある。
屋根に並んだガラベンがまた素晴らしい。

最後尾を見れば、まさに旧客そのもの。


後ろのドアは開放されているので、
デッキで風を受けながら去りゆく景色を
堪能することができる。

列車を牽くのはこのゴツいディーゼル機関車。R100形という型式の米国製の機関車である。番号からしてR100形の17号機ということなのだろう。
中文のwikipediaの情報によるとスペックは以下のとおり。
     営業最高速度 100km/h
     牽引力    15180kgw
     台車     A1A-A1A
面白いのは台車で、3軸配置でありながら中央の車輪は軸重分散が目的で配されており、動力無しの従輪である。つまり動輪は4軸であるから、日本風の形式名ならばDD***となる。

運転台は片側だけなので、客車との連結は
気を遣うことだろう。

はやる気持ちを抑えつつ車両へ乗り込む。


車内に入ると転換式クロスシートが並んでいた。
昔は優等列車として運用されていたのだろうか。

客車の窓を開放してみた。
風を受けながら客車で旅を出来るなんて
なんて幸せなことだろう。
窓の脇にあるスイッチは扇風機のON・OFFだったと思う。

車内スピーカーは国鉄型車両で良く見かけた形状である。
115系300番台にも同様のスピーカーが付いていた。

発車時間が迫ってくると、そこそこの乗客数となった。
ほとんどが台湾と日本の旅行者(鉄人)達のようだ。
海側の席はやはり人気である。


列車は静かに動き出し、枋寮駅を出発した。


列車は農業地帯を南へと快調に進んでいく。
窓から入る風が実に心地よい。

列車は一日に2本しか停車しない、
内獅(Neishi)駅に到着する。
台東方面は11時過ぎに到着するこの普快列車が最終である。


車窓動画(内獅→枋山) 5分15秒
列車は徐々に高度を上げ、やがて海を見下ろしながら走る。
窓を開けて吹き込む風を浴びながら、
エメラルドグリーンの海を眺めながらの鉄旅。
幹線とあって爽快な速度で走っていく。
車窓は2分50秒~、3分43秒~あたりがオススメ。


列車から海を眺めるには、
ちょっとした高さがあると良いと思う。
この南廻線に乗ると、
ほどよく高いところから海を眺められる。


やがて列車は進路を東よりへと変えていく。
まもなく枋山駅。


枋山駅を出ると列車は徐々に海から離れ、
山へ分け入っていく。

最後尾に行き、離れゆく海を眺める。

カーブにさしかかると機関車の姿が目に入る。
緑に覆われた山の中、
窓を全開にして清涼な空気を愉しむ。
なんと贅沢なことだろう。

列車は川の上流に向かっていく。
このあたりは並行道路がないのか、
人工物がほとんど目に入らない。

やがてゴトリゴトリと体を振って
枋野駅構内へと入る。
ここで自強号との行き違いをする。

この駅は台鐵ホームページの列車時刻表の
プルダウンで選択する駅として出てこないため、
一般利用は実質的に無いと思われる。
実際のところは信号場としての機能が主のようだ。
駅員氏がいて、列車交換を確認する。

自強号との交換。
乗客は鉄人達が多くを占めるせいか、
カメラが多々向けられていた。

枋野駅は一線スルー方式であり、
交換する自強号は高速で通過していった。

発車を待つ間にデッキへ出て見る
実に開放的である。

 
列車は静かに発車し坊野駅を後にする。
長いトンネルで中央山脈を抜け、
屏東(ピントン)県から台東(タイトゥン)県に入る。

トンネルに入って目立つのは車内の照明。
いくつか点いていないところもあるが、
これはこれでご愛嬌。

トンネル内で駅弁を愉しむ。
普快列車への乗車前に通った潮州駅で購入。
中央の大きなものは魚の練り物を炒めたもののようだ。
味付けが良く、非常に美味しかった。

こちらはJ氏が同じく潮州駅で購入した駅弁。
肉がメインのようだ。

大武渓を長い橋梁で渡ると、太平洋が見えてきた。

ほどなくして、大武駅へ到着。
ここでまた自強号と交換。
自強号の乗車率は非常に高いようであった。

大武駅を出ると列車右手に太平洋が広がる。
素晴らしきかな、普快列車の旅。

こんな贅沢な車窓を、窓を開けながら楽しめる。

開放的なデッキからはこんな眺め。

車掌さんはとても美人な方であった。
ブログに掲載することを快くOKして下さった。

列車は金崙(Jinlun)駅へと到着。
この駅では自強号を先に行かせるため長時間停車する。
私とJ氏はこの後の予定のため、
この駅までの乗車となった。

あまりにあっという間の乗車時間であった。
メインの区間は乗車できたとはいえ、
出来れば終点の台東まで乗りたかった。

機関車の無骨なスタイルにはDD51とは違った魅力がある。
台車はボギーではなく3連配置。
3軸台車の真ん中の車軸は動力駆動しない付随車軸である。

発車を待つ3両編成の客車列車。
この素晴らしすぎる列車が旧型客車を連ねて
これからも末永く走り続けて欲しいと思う。

普快車台東行きは、金崙(Jinlun)駅を発車していった。
後ろのデッキからは1人の鉄人が手を振ってくれた。
客車、車窓、車掌さん、乗客の鉄人達、
全てが素晴らしかった普快車台東行き。
いつかまた再訪してこの列車の乗車したい。


※本稿に掲載している写真の使用、転載はお断りします。

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