2019年5月11日土曜日

内獅駅

台湾南廻線の内獅(Neishi)駅は、1日に上下2本ずつのみの普通列車が停まるローカル駅である。中文の情報を確認すると、2017年の年間乗車数は150人、下車数は241、乗車数を一日平均するとたったの0.4人である。内獅駅は長年にわたって台湾最少乗客数の駅として君臨してきたようだ。

そんなこともあってか、鉄道ファンの訪問が多いようで、「乗客よりも多くの鉄道ファンがいる」(2016年12月3日自由時報)と記事にされている。こういった駅に魅力を感じるのはどこの世界でも鉄人達共通なのだろう。私もその一人としてJ氏とともに朝の列車を使って内獅駅へと向かった

内獅駅は台湾南方、屏東県にあるローカル駅である。南廻線の列車はこの駅から坂をあがり、高台から海を見下ろすように南下していく。

早朝の枋寮(Fangliao)駅から普通列車(区間3501)台東行きに乗車する。潮州(Chaozhou)駅を始発とするこの列車は枋寮(Fangliao)駅で暫しの停車後、南廻線へと入っていく。


列車はガラガラで、乗車した車両は貸し切り状態であった。この車両は復興号(フッコウ号 Fu-Hsing Hao)向け車両であり、リクライニングシートにエアコン完備と充実した車内設備である。列車の最後尾には電源車兼荷物車が連結されていて、非電化区間でも安定的な電気供給が成されている。


列車のドアは自分達で開け閉めする。


客車の先頭へ来てみると、ドアが開いていて、R100型機関車を間近出見ることが出来た。無骨な外観は機関車らしい逞しさを感じさせる。


連結器は日本と同じ自動連結器。日本の客車列車の場合、機関車と客車の間に遊間が出来て、発車時にドンという衝撃が伝わる場合があるのだが、台湾ではそのようなことはなかった。


区間3501列車は枋寮(Fangliao)駅から2駅、時間にして12分ほど走ると目的の内獅(Neishi)駅へと到着した。下車したのは、私とJ氏のみ。乗車客はいなかったようだ。


R100型機関車はけたたましいエンジン音を立てて発車していった。このエンジン音は遠くまで届きやすいのか、列車が去った後もしばらくはホーム上で聞こえていた。


最後尾は電源車。荷物室がついているので、日本のブルートレインでいえばカニに相当する。


駅本屋は立派な鉄筋コンクリート建である。日あたり上下2本ずつしか停まらない駅にしては、意外なほど立派である。


この駅の線形はゆるやかな円弧を描いていて、私の好きな線路風景である。ホームには瓦張りの立派な上屋が備えられていた。


ホームと駅本屋とは構内踏切で結ばれている。踏切といっても鳴動しないので、自分で左右確認をしっかりとする必要がある。停車本数は少なくても通過列車の多い路線である。


ホームから駅へと入る段差の所に大理石の踏み石が備えてあった。駅舎へと迎えられたような気持ちになる。


駅舎内はガランとしていて、ベンチなどはない。窓や扉もないので、常時風が吹き抜ける状態である。風雨が強いときは少々大変かもしれない。


駅舎内は比較的広々としている。清々しいほどに何も置いてないだけに実にスッキリとしている。


内獅駅は1992年10月に開業し、約1年後の93年11月に無人駅となるまで簡易駅として有人であったとのこと。当てられた鉄板はかつての窓口を表しているのだろうか。


列車はご覧のとおり、上下2本ずつのみ。近くの主要駅である枋寮駅への通勤・通学利用が主かと思いきや、枋寮駅から戻る列車の最終が午前中なので、そうでもないようだ。

こちらが駅舎の全景。中々立派な建物である。


こちらは駅前の様子。駅の目の前には、片側2車線の一級道路台1線があって、車がそこそこ走っている。そのため秘境感は弱い。


道路にでると近くには「内獅國小」バス停があった。路線バスは1時間に一本程度走っているようで、利便性ではバスに軍配が上がる。

国道を少し南に歩き、線路をくぐった先には内獅の中心部がある。


道路の脇には家々が立ち並び、比較的賑やかである。


内獅駅の脇には小学校へアクセスするためと思われる歩道橋がある。


歩道橋へ上がってみると、果樹園を背景にした内獅駅の素晴らしい景色が待っていた。緩やかな曲線の線形とあいまって実に良い絵である。


通過する自強号を歩道橋の上から撮影してみる。J氏とともに私も挑戦したのだが上手く撮れない。ここは撮影技術の卓越したJ氏の写真を拝借し、迫りくる自強号を掲載させてもらう。


歩道橋を降り、駅と果樹園を隔てる道路を歩くとレンガ造りの遺構が現れた。昔の水路なのだろうか。ポツンと残った姿がとても良い絵になっている。


ぐるりと駅のまわりを一周してホームへと戻ってきた。朝の上下列車を利用することで、ちょうど良い滞在時間を確保することができた。


やってきたのは、3514次潮州(Chaozhou)駅行き区間車。機関車の回送を兼ねているのか重連形態でやってきた。この列車を牽引するのは復刻塗装を纏うR100型の初号機であった。


編成が長いせいなのか、先頭の機関車はホームをはみ出て停車した。この列車に乗車したのは私とJ氏の2名のみ。下車客はいなかった。

内獅(Neishi)駅は計画中の恒春線の分岐駅となる予定である。恒春線はここから墾丁国家公園へと計画される路線で、開通すれば多くの観光客が利用することが予想される。そのときには、内獅(Neishi)駅の雰囲気も今と全く変わっているのだろうか。その時代が来ても、今回のように客車列車に乗って訪問してみたいものだ。


※J氏撮影の写真(Picture from J氏)の使用、転載はお断りします。



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