2019年2月1日金曜日

寝台特急「北斗星」ロイヤル乗車記

寝台特急「北斗星」号は私にとって非常に思い入れのある列車である。デビュー当初から乗車への憧れは強かったが、フジテレビで放送された「完全走破!上野〜札幌寝台特急北斗星の旅」を見てからは、さらにその思いが強くなった。録画したビデオテープがすり切れるほど見たと言っても過言ではない。

田端でEF81がパンタグラフを上げるシーン、人の行き交う上野駅、荷物を抱えた人たちが乗り込むブルートレインなど、夜行列車が出発する雰囲気を駆り立てる編集によって、最初から引き込まれしまう。ブレーキ緩解の後、初段ノッチが入り、汽笛を鳴らしてゆっくりと発車していく北斗星号の姿は実に格好良いものだった。発車と同時に流れ出すChicagoの"25 or 6 to 4"から始まるBGMもまた、素晴らしい選曲ばかりで、今でも北斗星の各場面を思い出しながら聞くことがある。

発車してから札幌までは機関車交換シーン以外は、ほとんど前面展望であるのだが、夜間走行となる東北本線の一部では、編成案内や食堂車のメニュー紹介があるなど、北斗星号の魅力を存分に見せてくれた。


この番組の効果もあり、北斗星への乗車はいつしか強い目標となり、実際に乗ることも出来た。特に印象深いのは長きに渡る大きな仕事が一段落つき、まとまった休みに往復乗車した時である。このときは絶対にA個室ロイヤルに乗ろうと、上り列車をターゲットに10時打ちを狙ったのだが、あえなく撃沈。

ところが、ふらりと寄った渋谷駅の窓口で下りロイヤルの空席を聞いてみたところ、「ありますよ」との駅員氏の回答が。発売開始から一週間近く経っていたにも関わらず、こんな幸運はあるのだろうかと、鉄旅の神が微笑んでくれたような気がした。寝台券が取れた以上は食堂車のディナーもということで、ディナー券の予約もその場で完了し、北海道旅行への出発を待つばかりとなった。


19時03分、上野駅13番線を定刻通りに発車した。尾久を過ぎるあたりまでの列車案内放送と去りゆく夜景の動画である。(6分01秒)
1:25 ハイケンスのセレナーデ       
1:33 案内放送開始            
2:16 鶯谷駅通過             
 3:10 日暮里駅通過             
5:03 ハイケンスのセレナーデ(案内終了)  
5:05 尾久車両センター通過        
5:15 発車準備の進む「あけぼの号」が見える

大宮駅を出るとディナーの案内放送があり、食堂車へと向かかう。ナイフとフォークの多さがコース料理であることを物語っていて、これからどんな料理が来るのかとワクワクしてしまう。

この日のディナーはテーブルが8割方埋まるぐらいの利用で、リラックスして利用することができた。

最初に運ばれてきたのはフルーツと海鮮の前菜。お皿は北斗星号とカシオペア号専用のものである。このお皿は北斗星なき今も、大宮にある鉄道博物館のレストランで使われているようだ。鉄道博物館へ行くことがあれば、是非ともレストランを利用してみたい。


ヒラメの湯葉包み蒸し。ソースが素晴らしく上品で白身魚との相性が抜群であった。


牛フィレ肉のソテー。これまた美味也。


テーブルランプに穏やかに照らされたディナーはまさに非日常であった。この時間を心ゆくまで楽しんだ。

メインのお次はフルーツ、アイスクリーム、ケーキのデザート。

最後はコーヒーで食事を終えた。至福の時とはまさにこのことを言うのだろう。旅行前に大変だった仕事はこの時間を楽しむためにあったのかと思えるほど、幸せな時間であった。

那須塩原のあたりで食事を終え、先頭に来てEF81のご尊顔を確認する。このときは青森駅の線路工事の関係で電源車が最後尾上野側となっており、下り北斗星では先頭のEF81を客車から見ることができた。


東北本線内では個室は山側であった。これは都合の良いことで、金谷川から福島駅へ向かう途中、福島盆地の夜景を眺めることが出来た。仙台駅へ到着する頃には部屋備え付けのシャワーを浴び終え、ベッドメークを完了。写真は仙台駅1番線へ停車中の様子である。

ロイヤルには専用のポーチにアメニティグッズが入っており、それを出してみる。個室内には洗面台、トイレ、シャワーが備え付けられている。

夜は更け、午前6時半前。ここは青い森鉄道の野辺地駅付近。写真に写っているのは南部縦貫鉄道の築堤跡である。

本来ならば江差線を走行し、函館に到着目前の時間帯であるが、先行するカシオペア号が盛岡から十三本木峠へ向かう上り坂の途中で立ち往生したとのことで、後続の北斗星号もその影響を受け、4時間近くの遅れが発生していた。私としてはロイヤルに乗車できる機会に、より長く日中時間帯の車窓を眺められることが嬉しかった。

モーニングコーヒーが届けられた。個室から雪景色を眺めながらのコーヒーは格別である。

朝食は食堂車ではなく、個室へのデリバリーをお願いした。A個室でしか利用できないサービスだったので、ここぞとばかりに利用してみたのだ。和洋折衷の豪華な朝食である。

青森信号場へ到着。通常ならば深夜帯の停車で、信号場内の風景は見通せないはずである。この風景を目に焼き付けておいた。

場内には今は無きED79がたくさん待機していた。

上野から北斗星号を牽引してきたEF81 88は、ここでED79へとバトンタッチ。EF81 88の牽引により、北斗星号自体は十三本木峠の登り坂で空転停止することなく通過することが出来たようだ。

青森信号場から津軽線へ入って間もなく、青森車両センターを通過する。はまなす号の客車や485系がたむろしている。

北斗星は青函トンネルを抜け、北海道に入った。右に左にとカーブを走りつつ、だんだんと函館山が近づいてくる。江差線から眺める津軽海峡の景色は何度見ても素晴らしいものである。


下り北斗星 江差線走行車窓 1:07(J氏撮影)

ここの景色を見ると函館へ来たのだと実感する。青函連絡船が廃止されたときには、旅情が大いに失われたと言われたものだが、この江差線の車窓を眺めつつ、函館へ近づいていく様には格別の旅情を感じる。


快速海峡で使われていた50系5000番台が見えてくると、間もなく函館駅へと到着する。江差線走行時に函館駅で運転打ち切りの可能性が案内されており、札幌まで乗り通したかった私はハラハラしていた。函館到着直前に札幌まで運転が確定し、特急スーパー北斗や北斗には抜かれずに行くことが案内され、ホッと胸を撫でおろした。

函館駅へは定刻より4時間ほど遅れての到着となった。札幌方にはDD51が連結され、函館本線を走るための準備が整った。


下り北斗星 函館駅発車 1:36(J氏撮影)
栄えある「1列車」が呼称される
             0:06 1列車運転士さんどうぞ
             0:08 1列車運転士ですどうぞ
             0:10 1列車函館発車(車掌氏)
             0:13 1列車函館発車(運転士氏)
             0:20 汽笛

五稜郭にはEF79が控えていた。右端に写っているヘッドマークつきのED79は北斗星に先行してきたカシオペアを牽引していた機関車だろう。

七飯から藤城線に入り大沼へ近づくと、大沼と駒ヶ岳の案内放送がある。この車窓で見えているのは小沼でその先に見える山体が渡島駒ヶ岳である。北斗星旅行の見所の一つである。

駒ヶ岳駅近辺ではその名の通り、渡島駒ヶ岳を間近に見ることができる。この日の渡島駒ヶ岳は少し雲がかかっていたが、雪をまとった美しい姿を見せてくれた。

駒ヶ岳駅から森駅に向かっては下り急勾配、急曲線が続く。列車は大きなカーブを何度もやり過ごしていく。廃止された東山駅姫川駅などの秘境駅はこの区間にあった。

北斗星号は森駅へと到着。私はこのとき食堂車にいた。というのも、遅延により列車が昼食時間帯にさしかかり、食堂車が臨時営業を開始したのだった。提供メニューはカレーのみとはいえ、北斗星の食堂車で昼食という貴重な経験をすべく、勇躍して食堂車へと向かった。大幅に遅延したときにのみ、このような食堂車の昼食営業が行われていたようで、北斗星に400回以上乗車された鈴木周作さんの著書で紹介されている。

乗客全員に昼用のお弁当が無料で配布されたこともあってか、食堂車の昼食利用客は少なく、私の他に2名のみであった。

運ばれてきたのは、日本食堂あらため日本レストランエンタプライズ伝統のカレーである。内浦湾を眺めながら食べるカレーは格別に美味しかった。

白鳥大橋を過ぎると間もなく東室蘭へと到着である。

東室蘭へ来ると、大体は711系が停車していることもあり、電化区間へと来たことを実感させてくれる。711系は私の大好きな車両の一つであった。

苫小牧を出ると、岩見沢方面へと向かう室蘭本線とはここでお別れとなり、千歳線へと入っていく。

下り北斗星札幌駅到着後、回送発車 (1分42秒 J氏撮影)
およそ4時間ほどの遅れで北斗星号は札幌駅へと到着した。ロイヤルに乗れたタイミングでここまで北斗星を堪能できたことは真に幸運であった。何故か札幌駅到着時の写真を撮り損ねてしまったこともあり、J氏が撮影してくれた北斗星引退間際の札幌駅から手稲へと引き上げる風景を載せる。

夜行列車で行く北海道旅行は何にも代えがたい良さがあった。四季島は値段的に敷居が高いこと、また道東、道北方面への旅行が出来ないこともあり、食指を伸ばすことは無さそうである。ただし、四季島はEDC動力形式ならば北海道へ直通することが可能ということを示してくれた。EDC形式で北斗星が復活する妄想をして、これからの北斗星を脳内で楽しみたいと思う。

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最後にJ氏が提供してくれた、「完全走破!上野〜札幌寝台特急北斗星の旅」の最後のシーンと同じ位置で撮影された北斗星の通過風景をお見せして本稿をおしまいとする。
下り北斗星 東北本線走行風景(1:31 J氏撮影)


上野発車時を除く全ての動画は、鉄旅の先輩であるJ氏より提供頂きました。ここに記して感謝申し上げます。


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