函館本線小沢駅には大きな魅力が2つある。一つは「トンネル餅」で人工甘味料や人工着色料を一切使わない、甘みのあるお餅。そしてもう一つは古くからの姿をそのまま留める跨線橋である。トンネル餅を製造・販売する末次商会のおかみさん曰く、跨線橋を撮影するために小沢駅へ訪問する人もいるとのこと。価値ある跨線橋は確かにそこにある。
小沢駅は、函館本線の山線区間と呼ばれる長万部~小樽の区間にある。倶知安駅の隣で列車の本数は比較的多いので、訪問しやすい駅といえよう。トンネル餅を販売する末次商会は駅のすぐそばにある。
銀山駅から乗車したキハ150単行の倶知安行きは、稲穂峠を越えて間もなく小沢駅へと到着する。広い構内はここから分岐していた岩内線の名残である。
到着したキハ150からは、私の他にもう一人若者が下車した。
倶知安行き列車はまたここから一つ峠を越えて、倶知安へと到達する。山線はアップダウンの多い、厳しい山岳路線である。
ホームには古めかしい跨線橋が利用者を待ち受けている。
跨線橋の入り口には筆書きの標板が掲げられている。長くここにあるのか、下の方は文字がかすれてしまっている。
側壁はパネルで化粧されているが、屋根を見ればこの跨線橋が如何に歴史あるのかが容易にわかる。屋根をささえる梁もまた古い木材で構成されている。
跨線橋には小沢駅駅員一同と画名の入った、素晴らしい絵画が掲げられている。画才のある方が代表して描きつつも、皆が筆を入れたのだろうか。描かれている神仙沼は共和町を代表する観光地である。
機会を見つけて行ってみた神仙沼。その景色はご覧の通り。木道が整備された森と湿原を歩いた先に神仙沼がある。沼のほとりで過ごす時間はまさに癒やしそのもの。
跨線橋を渡り、駅待合室のある旧一番ホームへと降り立つ。振り返れば木目そのままが見られる跨線橋があった。
旧1番ホームは岩内線が発着していた。それを示す標柱が立っている。
跨線橋から降りる階段の小樽方は、木枠の窓が残っていた。残念ながら跨線橋の階段は倶知安方にしか降りられず、この写真部分は利用することが出来ない。今や短い普通列車のみが発着するのみとあっては、階段は片側で十分なのだろう。
待合室は至ってシンプルでプラベンチが並んでいる。発車時刻表の脇に駅ノートがある。書き込みを見るとトンネル餅を目当てに来る人が多いようで、買うことが出来た喜びが様々な表現で記されていた。私も同じくトンネル餅についての書き込みを完了。
駅前にはたけだ旅館がある。末次商会の女将さん曰く、SLが走るときにはこの旅館は常に満室だったそうだ。C62の復活運行が終わり、C11の運行も途絶えてしまったいま、このあたりを訪れる鉄道ファンは減ってしまったのだろうか。
駅からすぐそばの末次商会のお店。トンネル餅はここで買うことができる。
購入できたトンネル餅がこちら。加えて岩内線のサボストラップや小沢駅の駅名標ストラップも購入。こういったものを見るとついつい財布の紐が緩む。
小沢駅から乗車した列車内で食べたトンネル餅。ほんのり上品な甘さが実に素晴らしい。保存料などは一切使っていないので、消費期限は製造日(買ったその日限り)である。まさに現地でしか食べられない貴重な一品。小沢駅へ行く際には是非とも買いたい一品だ。
末次商店の店内には昔の写真などが多数掲げられている。女将さんはとても話し好きな方で、昔のことをたくさん話してくれた。岩内線の分岐駅ということもあり、駅職員が30人もいた時代もあったとか。
列車の発車時間が近づき、跨線橋を渡ってホームへと向かう。跨線橋から見えたのは美しい青空と広い構内であった。
やってきた小樽行き列車は後ろにキハ150を従えたキハ40 823。キハ40好きとしては先頭車両に乗りたかったが、混雑していたこともあり、後方のキハ150に腰を下ろした。小樽へ向かう列車内で食べたトンネル餅は格別に美味しかった。