2019年2月8日金曜日

香椎線 キハ40系の旅


香椎線は福岡近郊を走るローカル線である。この路線の特徴は両端の駅に接続する他路線が無いことで、それゆえに乗りつぶしや旅行のルートに組み入れ難かった。そんなわけで中々乗車の機会を持つことがなかったのだが、この路線から国鉄型車両の生き残りであるキハ40系が近々引退するとのことで、鉄旅の先輩であるJ氏と共に香椎線キハ40系を求めて西戸崎駅へと向かった。

 やってきたのは西戸崎(さいとざき)駅。2本の列車が同時に停車できる配線となっている。


 
乗車するのはキハ47 9074でエンジン換装のなされた車両であった。原型エンジン車両が走る香椎線であるがゆえ、その車両を期待していたのだが、第1ランナーはエンジン換装タイプ。後ほど原型エンジン車両に乗ることもできたので、結果的にはいろいろ楽しめて良かったと思う。

 西戸崎駅ホームのすぐ先には、終点らしい車止めがある。九州の車止めマークは大型のものが多いなかで、ここは標準サイズであった。


キハ47の車内は多数のボックスシートが並んでおり、国鉄型車両らしさを感じる。扇風機は現役のようだ。


西戸崎∼海ノ中道は香椎線で最も景色の良い区間である。宇美へ向かって右側には博多湾の景色が広がる。到着した海ノ中道駅では多数の乗車客があり、車内は一気に満席となった。

列車は香椎線の中心駅香椎駅へと到着した。ここで宇美行の列車へと乗り換える。

 
香椎駅が行先となっている列車が多いだけに、側線にはお仲間のキハ47が休憩していた。

北海道のキハ40がエアサスを装備しているに対し、暖地向け40系はコイルバネである。ゴツゴツした縦揺れが面白い。

 
 私とJ氏が乗車する香椎発、宇美行きはこちらの編成。
西戸崎キハ47 130・キハ47 1099→宇美
という構成で、原型エンジン車両のペアであった。

香椎線キハ47 130の香椎~香椎神宮の車窓(2:53)。
原型エンジンが唸る。

緑色で統一されたコントローラや計器パネルは国鉄車両を象徴するかのようだ。

酒殿駅まで来ると、進行方向左手には山々が見えてくる。昔は、この駅から貨物支線が分岐していたようだ。ここには石炭を満載した貨車が並んでいたのだろうか。ここに9600型機関車とセキがいたら、さぞかし絵になったのだろうと想像する。

列車は終点の一つ手前にある新原駅へと到着した。私とJ氏は新原駅を見るべく、途中下車をすることにした。この駅では待ち合わせのため、3分ほど停車となっていた。

後からやってきた上り列車が香椎方面へと発車していく。ローカル線らしいキハ40系とマッチした光景だと思う。香椎線で見てきたシーンで一番好きな場面である。

 
こちらが新原駅の駅舎。木造の引き戸が良い雰囲気を出している。駅名板にはふりがなが降ってある。 


 ホームの案内は昔ながらの書体で書かれていた。

 駅の構内踏切からは、宇美方面の下り線に昔の低いホームを見ることができる。

 20分ほど滞在ののち、次の列車がやってきた。嬉しいことは続くもので、後ろのキハ40もこれまた原型エンジン車であった。

 新原から一駅走り、終点の宇美駅へと到着した。夕日を受けるキハ40 2053がアイドリング音を静かに鳴らしながら、折り返しの運用を待っている。

 宇美駅の先は確かに線路が止まっている。線路は剥がされているが、機回し線の跡が見えている。かつては客車列車を引いてきた機関車がここで機回しをしていたのだろうか。
 
宇美駅は宇美八幡宮の最寄り駅ということもあってか、神社風の駅舎を構えている。乗降客が比較的多い駅ではあったが無人駅であり、皆sugocaをピッと自動改札へとタッチして乗車下車をしていた。

 発車を待つキハ40とキハ47のペア。この列車へのまとまった数の乗車と下車があり、また立派な自動改札機が2台並んでいる風景を見ると無人駅であるのが不思議に思えてしまう。


宇美方のキハ47 8074は昭和54年に富士重工で製造されたとのことで、実に40年近くの稼働となっていた。

 相方のキハ40 2053はキハ47 8074より1年若く、新潟鐵工(新潟トランシス)にて製造された。

国鉄時代からの3枚羽扇風機。扇風機を装備している車両は随分と少なくなってしまった。

キハ40 2053の香椎行きで戻り、長者原駅で香椎線の旅を締めくくった。

長者原駅で私たちを降ろした列車は、たくさんの高校生を載せて香椎へ向け出発していった。

長者原駅は立体交差になっていて、下を篠栗線が走っている。篠栗線の線路は幹線であることを象徴するかのように輝いていた。

この日の香椎線は下り、上り共にかなりの乗車率であり、輸送密度の高い路線であることを如実に感じた。全線でsugocaが使えるというのも納得である。かつて香椎~宇美の南半分が国鉄末期に使命を終えたと定義される「赤字83線」に含まれていたとは信じがたいほどの良好な乗車率であった。

今や香椎線には30分に一本、朝夕は20分に一本が走り、廃止が取り沙汰された香椎~宇美は西戸崎~香椎よりも利用者数が多くなった。2017年度の1kmあたり年間運賃収入は約3千2百万円と九州の地方交通線ではトップで、2位の大村線のおよそ1.5倍となっている。

元々私鉄路線ということもあり駅間距離が短く、また長く続く急こう配もないことから、これから導入されるDENCHAことBEC819系には適した路線なのだろう。キハ40系が引退するのは寂しいが、香椎線が成長路線としてこれからも繁栄していくことを期待したい。 

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おまけ
西戸崎駅前にはタバコ屋さんがあり、その前で日向ぼっこをする猫がいた。この猫さんは実に可愛らしく風景に溶け込んでいた。

 西戸崎駅へ向かう前に志賀島へ寄ってみた。金印公園にはレプリカの金印が展示してある。金印の裏面もみられるように工夫してあって展示の仕方が素晴らしい。展示の金印も金の質感が良く表現されていて、これまた素晴らしいものであった。

金印公園から歩いて志賀島の中心部へ戻る途中、面白い看板を掲げたジャム販売の農園を見つけた。「営業時間適当」という文字は初めて目にする。

 志賀海神社に参詣。

 昼食はサザエで有名な中西食堂でとることにした。

サザエ丼につぼ焼き2個がついた、つぼ焼きセットを注文。大きなサザエの食感や磯の香りが良いうえに、サザエ丼の味付けが良く、非常に美味しかった。志賀島へ行く際には、再びこのお店へ行きたいものだ。絶え間なくお客さんが来ており、店内は満席状態が続いていた。それだけ人気のあるお店なのだろう。

 西戸崎駅へ向かう路線バスを待つ間に海ノ中道に寄ってみる。博多湾越しに福岡の市街地を遠望できる。志賀島と九州を結ぶ細い砂州部分は、道路の両側が海という面白い場所で、路線バスでここを旅するのは中々愉快であった。

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