五能線は広戸駅から深浦駅へ向かって行合崎の根元を通り、抜群の海岸美を見ながら進んでいく。この区間は五能線の車窓で最も素晴らしい。
列車は私一人を降ろし、走り去っていった。この列車への乗車客は無かった。
ホームから降りたところに、こじんまりとした待合室がある。駅前の道路は時折車が通るだけで、後は海の波の音が聞こえるくらい。
ホームから降りたところに、こじんまりとした待合室がある。駅前の道路は時折車が通るだけで、後は海の波の音が聞こえるくらい。
こちらは待合室の中。広いとは言えないが、利用者数を反映した適正なサイズなのだろう。一人旅の自分にはちょうど良い空間であった。
運賃表は深浦から川部方面のみの記載。広戸駅の利用者は深浦から東能代方面へ行くことは少ないのだろう。
入口側には待合室全体が見られるような位置に監視カメラが備えられていて、驫木駅同様のセキュリティ対策がとられていた。
壁には多くの注意書き。過去には駅寝のケースがあったのか、待合室の宿泊を禁止とある。昔はステーションビバーグという言葉があったくらいだが、現代では死語になりつつある。写真右下にあるのが、駅ノートである。
広戸駅の駅ノートには中々ウィットに富んだ十箇条なるものが表紙に貼り付けてあった。中を拝見すると、日本全国の駅巡りや、五能線全駅乗降を目指す人など、中々にして熱い鉄人達の書き込みが多い。自分もここに足跡を残した。
駅の脇を出ると緩い曲線を描いた線路越しに行合崎が遠望できる。行相崎海岸にはニッコウキスゲの大群落があり、6月に見頃を迎えるようだ。
広戸駅とその周囲には線路脇にフェンスが設置されている。防波目的だろうと思うが、腐食して穴が空いてしまっている。こういった場所の材料は腐食対策が取られているはずだが、ここの波浪の影響はそれを上回るレベルなのだろう。
深浦側から広戸駅を眺めてみる。S字カーブの途中に鄙びたホームがあるという中々素晴らしいローカル駅の絵である。
およそ1時間ほど広戸駅を堪能した後、乗車する東能代行き列車がやってきた。
この列車に乗りこんで広戸駅を後にした。先頭車の乗客は自分のみで贅沢な五能線の鉄旅を再開することとなった。