2016年9月30日金曜日

糠南駅

宗谷本線糠南駅は、牧草地に囲まれた場所にポツンと板張りのホームがあるという、北海道ローカル駅らしさ満点の駅といえる。

駅に降りれば、冬は静寂が支配し、夏には鳥さえずりや虫の鳴き声だけが聞こえる癒やしの空間が待っている。駅は絶妙な曲がり具合の線形上に位置していて、駅と線路の構図が何とも良い絵になる。

また、全国広しといえども、この駅にしか見られない物置待合室という特異性もあり、駅巡りを愛好する鉄人達の間では、半ば宗谷本線の聖地のような存在となっている。

 
雪の中にぽつんと佇む物置待合室と板張りのホーム。
曲線美のある線形も相まって何とも良い絵である。 


糠南駅の雄信内側は手塩川のすれすれを走る難所越えとなる。
問寒別へは比較的近いので、歩いて行くことができる。

 
 糠南駅が近づいてきた。
この先にホームがあるはずだ。

 
短い板張りホームと物置待合室の出現に胸が高鳴る。

 
そして下車。 
同じ目的を共有する旅行者2名も下車した。

 
近くに人家はなく、 だだっ広い雪原が迎えてくれた。

 
 物置待合室は正面から見ると全く以て待合室に見えない。
扉を開けるとそこには駅の備品がたくさんある。

  
 駅ノートには地元の方の書き込みも見つけることができた。

 
待合室だけにちゃんと開閉可能な窓が付いており、
列車の到着を確認することができる。


 駅へと続く道はしっかりと雪かきがなされていた。

 
道路から駅を眺めてみる。
静かに佇む雪原と駅名板の雰囲気が伝わってくる。

 
 
やがて特急サロベツがやってきて走り去っていく。
 今までこの区間の乗車には優等列車を利用していたため、
この駅の魅力に気づいていなかった。
宗谷本線の魅力は旅情あふれるローカル駅の存在であり、
普通列車に乗車してこそ、その魅力を堪能できると言えよう。
 
 
こちらは夏に訪問したときの写真。
上り列車に乗ってやってきた。

列車は自分独りを下ろして発車していった。
駅は青々とした草地に囲まれ、実にすがすがしい気分になれる。

 
駅の裏手にはこのような牧草地が広がっている。

 
名寄方の端からホームを眺めてみる。

駅の裏手には未舗装の道路がある。
冬には撮影できなかったアングルだ。
快晴の空が美しい日であった。

 冬と変わらず、物置待合室は綺麗に整頓されていた。
農作物の収集コンテナをひっくり返した2つのベンチが特徴だ。

 
簡易ベンチの片方には布がかぶせてある。
その気遣いがありがたい。

 
待合室の椅子に座るとこのような眺めが得られる。
ここに座って駅ノートを眺める時間は至福である。

 
冬と同じアングルで踏み切りから撮影してみる。
やはりこの駅の出す味は唯一無二である。

 
駅近くの踏切には、「汽車」マークの踏切標識がある。
最近は「電車」マークにとって代わられ、
数を減らしつつあるようだ。

約50分の滞在後、雄信内駅へ向けて駅を後にした。
急ぎ目で見たつもりが、50分はあまりにもあっという間であった。
糠南駅を堪能するには、1時間以上は掛けてみたいものである。

ーーー

おまけ 

 
上り列車で到着するときの糠南駅の光景。
この駅を見たら、降りてみたいという気持ちに成らざるを得ない。

 雄信内駅へ向かう途中に、
問寒別集落近くの踏切から見たキタキツネ。
北海道らしい写真を収めることができた。















2016年9月24日土曜日

八戸線 キハ48乗車記

八戸線の車窓から眺める太平洋は実に風光明媚である。砂浜越しに眺める区間もあれば、松林越しに高台から眺める区間もあり、飽きることがない。

使用車両についても興味深い路線である。八戸線には全国的に数を減らしつつあるキハ40系が、ほぼ原型状態で主力として活躍しているのだ。ここのキハ40、48は原型エンジン、非冷房、ボックスシート、側面の行先表示はサボ、さらには車掌乗務による運用と国鉄時代を彷彿とさせるものである。陸中中野~侍浜の区間には最大25パーミルの坂があって、そこを変速段で原型エンジンを奮わせながらあえぎあえぎ上るという、国鉄型車両好きにはシビれる路線といえる。


出発は八戸駅。
運の良いことに3両編成の先頭はタラコ色のキハ48 1548である。

 
側面のサボは現役で使用されている。

 タラコ色のキハが出発を待つ。
車両の外板は状態が良く、潮風の中を
走る車両とは思えないほど綺麗だ。
 
 
八戸駅から程なくして鮫駅に到着。
昔はここまで50系客車による普通列車があった。
この日は空いていて、八戸からここまで先頭車内は
最大でも10人ほどであった。

鮫駅を出ると、蕪島と太平洋が見えてくる。

鮫崎灯台を後ろに眺めつつ種差海岸を通っていく。

高台では松の木々の間から太平洋が顔をのぞかせている。
様々な形で太平洋を眺められる路線だ。

 
キハ48 1548の車内は魅力満載。

扇風機のスイッチは客室内にある。

 
急行型と同じシートピッチを持つボックスシート。
ゆったりとくつろいで鉄旅を楽しむことができる。

 連結部の運転台を見てみる。
助手席の背もたれは驚くほど小さいものだ。

アナログな運転台。
国鉄車らしく、化粧が緑色で統一されている。 

 
車掌さんが運賃収受をする。
ローカル線でワンマン運転が当たり前になった現在では、
貴重な光景である。

 
列車は青森県最後の駅、階上(はしがみ)駅に到着し、
八戸行きと交換した。
八戸線は比較的最近までタブレットによる閉塞が行われていた。
この駅も2005年まで腕木信号やタブレット交換が見られたようだ。
 その時代に来てみたかった駅である。

宿戸駅を出て、陸中八木駅へ近づくと
海岸沿いを走るようになる。

陸中八木駅へ到着。駅は八木港に面している。

陸中八木駅から有家駅の区間は
八戸線でメインとも言うべき秀逸な車窓を楽しめる。

海岸線の緩やかなカーブに3両編成が連なっていく。

この日は晴れ渡り、穏やかな太平洋とも相まって
実に癒やされる車窓が展開していた。

海にはサーフィンをしている人の姿が見られた。


陸中八木から有家までの車窓動画。4:24
0:50~1:30 上り坂                 
2:50~   太平洋と砂浜            
穏やかな太平洋の車窓を堪能されたい。
車掌さんの肉声による放送、原型エンジン音、
キハ40系列独特のブレーキ操作時の空気音を
記録することができた。

陸中中野駅を出ると、海を離れ内陸に入っていく。

ここからは山越え区間で変速段のままエンジンが唸り続ける。

25パーミルの勾配標識が見えた。
キハ40系には厳しい斜度である。

ようやく峠のサミットが見えてきた。
侍浜駅が近いからブレーキを掛けよという標識なのか。

列車はほっとしたかのように侍浜駅で一息をつく。
この駅の標高は150mほどで、一駅で随分と登ってきた。
浜という文字がありながら、
この駅は海岸からは5キロ以上離れている。

侍浜を出ると下り坂が続き軽やかな走りになる。

最後の途中駅、陸中夏井駅に到着する。
この駅は本州では珍しい車掌車改造駅で、
しかもワフ改造とのこと。
駅訪問の際には有家駅とともに来てみたい駅である。

 
久慈川を渡ると、いよいよ終点の久慈駅である。

終着駅の久慈駅に到着。
海あり山ありの変化に富んだ車窓は実に素晴らしかった。

 
久慈駅は三陸鉄道北リアス線との境界駅。
構内には三陸鉄道の車両がたむろしている。


洗車線では36-Z形車両が洗車をされていた。

最後に構内踏切から世話になったキハ48を眺める。
またこれらの車両に乗って旅をしてみたいものだ。

久慈駅にはなんと贅沢なことに駅そばが2軒入っている。
こちらはJR久慈駅側のそば処。

売店も併設されていて、活気のある駅だ。

JR久慈駅の様子。
駅員がおり、みどりの窓口もある。
地域の中心となる存在だ。

こちらは隣接している三陸鉄道の久慈駅。
こちらにも駅そば屋さんが入っている。

ここには有名なうに弁当が売られている。
売り切れてしまうことも多いようだが、この日はまだ3個が残っていた。

リアス亭でほたてそば490円を注文。
ほたてが豪快に2つ入っている。

そばだけでなく、うに弁当も併せて購入。
うにがふんだんにちりばめられており、贅沢な駅弁である。
心も胃袋も大いに満たしてくれた八戸線。
今度訪問する際は、有家や陸中夏井などの駅巡りもしてみたいと思う。

列車乗車記


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